本研究により,有機質資材による土壌ヒ素可溶化促進リスクの指標として,資材の「酸性デタージェント可溶有機物含量」を提示できた。これまで,資材施用にともなう土壌ヒ素の可溶化と資材の特性についての関係は未解明であり,学術的に価値のある成果である。さらに,湛水前に土壌中で有機質資材を好気的に分解させることで土壌ヒ素の可溶化を軽減できることを明らかにした。農業現場では,有機質資材の施用から短期間で湛水することが奨励されることもあるが,ヒ素の可溶化という新たな視点から再検討が必要である。以上のように,本研究の成果は水田における有機質資材の適正利用に重要な知見を提供し,大きな社会的な意義があると言える。
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