研究実績の概要 |
マツノザイセンチュウ(以下、線虫)を病原体とするマツ材線虫病は、マツ類樹木に枯死を引き起こす深刻な樹木病害であり、防御応答の過剰誘導により樹木全体 が枯死すると考えられている。分子生物学的技術を使った大規模な研究により、線虫病原因子の候補が徐々に明らかとなってきているが、分子機能解析手法の不 足により病原因子の特定には未だ至っていない。私たちの研究チームは初年度に、木本類への外来遺伝子発現を可能にするALSV (Apple latent spherical virus)べクターを利用して、線虫由来の病原候補タンパク質をクロマツ種子の胚に一過的に発現させる系を確立した。2年度目は、クロマツ種子胚に線虫を直接接種した際のPR遺伝子の応答を調査した。その結果、PR2, PR4, PR5, PR6はクロマツ実生苗と同様の応答が確認できた。その後、これら4種類の遺伝子をマーカーとして、Bx-TH1, Bx-TH2, BX-CPI, Bx-GH30, Bx-GSTの5種類の線虫病原候補因子をクロマツ種子胚で発現させた。その結果、Bx-TH2およびBx-GH30の2種類が顕著にクロマツ種子胚のPR遺伝子応答を引き起こすことが明らかになった。現在は、線虫タンパク質を発現させた際の線虫タンパク質局在やPR遺伝子応答を時系列的に調査している。
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