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2019 年度 実施状況報告書

牛白血病の発症における突然変異誘導酵素AIDが果たす役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K16008
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

西森 朝美  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (80817578)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード牛白血病 / 腫瘍発症機序 / B細胞 / AID
研究実績の概要

本研究では、ウシのB細胞性リンパ腫である牛白血病(BL)の発病リスク因子の解明を目的として突然変異誘導酵素AIDの発現・機能解析を実施する。本年度は国内で発生したBL発症症例の収集を行い、これらの臨床検体と細胞株を用いてAID発現量の解析およびゲノム中ウリジンの検出系の構築を行った。
国内の食肉衛生検査所からの協力を受けてBL発症が疑われる22症例を導入し、うち21症例をウシ白血病ウイルスに由来するBL症例と判定した。収集した血液・組織材料からリンパ球を分離して、磁気細胞分離技術により死細胞除去処理を行った後にTotal RNAを抽出した。また、B細胞系ウシ細胞株3種、非B細胞系ウシ細胞株2種、非B細胞系ウシ初代培養細胞4種についてもRNAを抽出し、リアルタイムPCR法によりAID mRNA発現量の定量を行った。その結果、細胞株および初代培養細胞においてはB細胞株1種でAIDの高発現が認められたが、その他のB細胞株2種および非B細胞系細胞ではほとんど発現がみられなかった。一方で臨床検体では、予想に反して腫瘍細胞におけるAID発現量は多くの検体で低値であり、陰性対照である腫瘍非発症牛と比較しても有意に低い値となった。
次いで、AIDの機能評価のためゲノム中ウリジン検出系の構築を行った。既報をもとにDNA中のウリジン存在部位を特異的プローブで標識し、HRPを用いた発色反応により検出した。確立した検出系は人工合成遺伝子においてウリジン量依存的な反応性を示し、細胞株および初代培養細胞由来のDNA検体についても発色反応が認められることを確認している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では、令和元年度にBL発症牛の臨床検体の収集と細胞株におけるAID発現量の解析およびゲノム中ウリジンの検出を行い、令和2年度に臨床検体から抽出した核酸を用いて同様の解析を実施する予定である。AID発現量の解析についてはすでに臨床検体での解析を行っており、計画に先んじた進捗を得ている。一方、ゲノム中ウリジンの検出に関しては、検出系の構築は完了しているものの細胞株を用いた解析が現在進行中であり、計画からやや遅れが生じているが、前述の進行分をふまえて次年度内に進捗状況の改善が可能と考えている。

今後の研究の推進方策

本年度の結果より、BL発症牛の腫瘍細胞におけるAID発現量は非発症牛と比較して亢進がみられず、むしろ予想に反して低い値となった事からBL発症にAIDが関与する事を示唆する結果は得られていない。当研究課題ではAIDが腫瘍発症のスイッチとして機能すると仮定しているが、長い経過をたどった腫瘍の終末像においては機能を失っている可能性も考えられる。そこで当初計画から一部変更し、次年度は最終年度に予定していた癌関連遺伝子の点変異検索を優先的に実施する。点変異の有無および変異様式はAIDが機能した結果を反映することから、より明瞭にAIDの関与を評価できると考えている。p53遺伝子などに代表的される癌関連遺伝子について塩基配列を決定し、後天的変異の抽出および変異様式の解析を行ってAIDが主導するC→U(T)変異の出現頻度を明らかにする。また、臨床検体におけるゲノム中ウリジンの検出およびAID遺伝子多型の検索は予定通り実施し、発見したAID遺伝子多型の機能評価については最終年度に検討する事とする。

次年度使用額が生じた理由

実施した解析に必要な試薬類が予定より安価に購入できたため次年度使用額として繰越を行った。繰越分は計画変更によって次年度に実施する癌関連遺伝子の変異解析をより充実させるために使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 牛白血病の発症における突然変異誘導酵素AIDが果たす役割の解明2019

    • 著者名/発表者名
      西森朝美
    • 学会等名
      第22回日本レトロウイルス研究会夏期セミナー

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公開日: 2021-01-27  

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