研究課題/領域番号 |
19K16040
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
長友 啓明 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (30746813)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胚性ゲノム活性化 / 顕微授精 / 雄核発生胚 |
研究実績の概要 |
本研究では1細胞期の雌雄ゲノムを半数体の状態で別々に作製し、2細胞期に融合することで1つの2倍体胚とする雌雄半数体融合胚生産方法を検討し、1細胞期に別々の転写制御処理を可能とし、1細胞期における雌雄ゲノムの機能差を調査することを目的としている。雌核発生胚は塩化ストロンチウムによる人為的活性化で作出し、雄核発生胚は卵子の紡錘体を除去したのち、精子の顕微注入により作製した。2細胞期に発生した各胚の片割球を顕微操作によりそれぞれ置換しセンダイウイルスを用いて融合し、2倍体胚を構築した。また、正常性を確認するため、仮親に移植し産仔率を調べた結果、通常胚と同等の産仔率であった。続いて雌雄ゲノムそれぞれのminor ZGAが発生に及ぼす影響に差があるのかを調べた。minor ZGAによる遺伝子発現を抑制するために、転写阻害剤としてRNA polymerase IIのリン酸化酵素を可逆的に阻害する5,6-dichloro-1-B-ribofuranosyl-benzimidazole (DRB) を培地に添加した。雌核発生胚または雄核発生胚についてDRB処理後、2細胞期で雌雄半数体融合胚を作製し、胚盤胞期までの発生率および移植後の産仔率を調査した。実験の結果、DRB濃度は100 uMで受精卵のminor ZGAがほぼ阻害できることがわかった。また半数体胚でDRB添加後に融合胚を作製し発生を調べたところ、minor ZGAにおける雌雄ゲノムの機能差が存在することがわかり、さらに雄ゲノム由来のminor ZGAが胚発生に重要である可能性が高いと考えられた。雄性ゲノム由来のminor ZGAを抑制した融合胚は胚盤胞までの発生が著しく低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA seqのサンプル作製が終了し、遺伝子発現解析を行っている。また、応用研究として予定していた、片側ゲノムのみ自在に編集する手法が確立でき、現在論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
minor ZGAに関する雌雄ゲノムの機能差についての研究を重点的に進めていく。一方で雌雄ゲノムを別々に編集する技術が開発できたため、論文を投稿し、またこれらの手法を利用して、複合ヘテロ接合体(compound heterozygote)の疾患モデルマウスの作製を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度RNAサンプルの作製に時間を要し、論文投稿まで至らなかったため、翌年度分として請求した。
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