心臓神経堤細胞は耳胞から第3体節に位置する神経堤領域から生じ、心臓流出路などの心臓形成に貢献する。心臓神経堤細胞は他の神経堤細胞とは異なる特有の分化運命決定機構をもつと考えられている。しかし、その機構は未だ不明である。 これまでの研究により、MafB遺伝子は神経堤細胞の中でも心臓神経堤細胞特異的な発現を示し、心臓神経堤細胞の初期発生に必須であることを見出してきた。さらにMafB遺伝子の発現調節領域をニワトリゲノムにおいて同定・単離し、これをbasal promoterおよびGFPにつないだレポーター遺伝子を作成し、ニワトリ胚に導入することで、MafBの発現を完全に再現できることを示した。本年度はこのMafBレポーター遺伝子の解析をさらに進め、このレポーターが神経堤細胞の中でも心臓神経堤細胞のみで発現することから、心臓神経堤細胞レポーターとして心臓神経堤細胞の形成・心臓原基への移動過程を追跡できることを示した。マウスではKrox20遺伝子を発現するロンボメア5由来の心臓神経堤細胞が、将来の心臓弁になることが報告されている。このマウスゲノム由来のKrox20エンハンサーを用いたレポーターはニワトリ胚でも同様にロンボメア5由来の心臓神経堤細胞を標識できることを確認した。さらに、MafBレポーター発現細胞の一部がこのKrox20レポーター発現陽性細胞と一致することから、これらの細胞がニワトリ胚においても将来心臓弁を形成すると示唆した。以上の結果を論文にまとめ、執筆した。
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