研究課題
若手研究
棘皮動物寄生性であるハナゴウナ科の巻貝類を対象に、野外における生態調査、形態比較と遺伝子解析を併用した種多様性の把握および系統関係の推定を行った。その結果、同種の宿主を複数種のハナゴウナ類が利用する例が多く認められた。それらが科ないし特定の属内の異なる系統に属する場合と、互いに極めて近縁な種である場合があり、後者は特に地理的に離れた地点間で見出された。これらにより、ハナゴウナ類の多様化には同種宿主への反復的な宿主転換と、地理的隔離の両者が寄与していることが示唆された。
系統分類学
寄生生物は200以上のグループが知られ、極めて高い種多様性を示すものがある。本研究では、ハナゴウナ科で同種宿主への反復的な宿主転換が明らかとなり、このような事象が寄生生物の多様化を促進することが示唆された。また、寄生生物は生態系の中でも重要な役割を果たす。今回得られたハナゴウナ類の系統分類ならびに寄生生態の基礎的知見は、海洋生態系の正確な理解につながるとともに、同分野に関する教育への貢献も期待される。