研究課題/領域番号 |
19K16324
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
田口 晃弘 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (40707311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジスルフィド / 環状ペプチド / 3-ニトロ-2-ピリジンスルフェン酸エステル / 創薬化学 / ペプチド合成 / 固相合成 / 有機化学 |
研究実績の概要 |
昨年度は、C末端配列を有する樹脂(フラグメントB)とCys無保護ペプチド(フラグメントA)を用い、これらをジスルフィド結合により連結した後、縮合反応により環状化させることで、ワンポットでオキシトシンのジスルフィド駆動型合成を達成することができた。今年度は、本合成経路における固相上でのフラグメント間の縮合反応について精査した。 まず、縮合反応で得られる環状ペプチドのラセミ化を調べた。反応後、脱樹脂により得られた粗生成物をHPLCにて解析したところ、ほとんどラセミ化は生じていなかった。また、縮合剤を用いない縮合法であるチオエステル法への適用も検討した。まず、フラグメントAに対応するペプチドチオエステルを新たに合成した。次いで、Npys誘導体によりCys側鎖を活性化させたフラグメントBとのジスルフィド結合交換反応により、ペプチドチオエステルを樹脂に担持させた。当該樹脂を銀イオン存在下、フラグメント間を縮合させることで環状ペプチドへと導くことができた。本検討において、ラセミ体は検出されなかった。一方で別途合成した保護フラグメントAおよびBを、ジスルフィド結合を経由せずに縮合したところ、反応効率の低下が観察された。以上の結果から、本法を用いることで環状ペプチドの効率的合成が可能となると期待できる。 更に、本合成法の有用性を示すため、ジスルフィド結合を3本有するヒトインスリンの合成にも着手した。ペプチド-樹脂及びペプチドフラグメントの合成が完了しており、検討を行う。また、Npys誘導体を用いた固相ジスルフィド結合形成反応において、反応条件を最適化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の実施計画であったオキシトシン合成におけるペプチドフラグメント間のラセミ化の検討を行うことができた。また、インスリン合成に必要なペプチド-樹脂及びペプチドフラグメントの合成が完了している。そのため、当初の計画通りに進んでおり、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
インスリンのジスルフィド駆動型合成を目指し、合成したペプチド-樹脂及びペプチドフラグメントを用い、検討を進める。合成インスリンは分析HPLCにより標品と比較する。また必要に応じて生物活性試験も実施し、その機能性を確認する。インスリン合成が達成された後、配列の異なるインスリン誘導体の合成も検討し、本合成法の有用性を示す。これら合成検討では、必要に応じて反応に用いるNpys誘導体、固相担体、ペプチドフラグメントの変更を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたフラグメント縮合時のラセミ化検討において、Npys誘導体やペプチドの合成に必要な試薬の購入費が少なかったため、未使用額が生じた。来年度は、インスリン合成に必要な固相担体、アミノ酸誘導体、及び合成、精製に必要な有機溶媒等の購入を予定している。
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