研究課題/領域番号 |
19K16490
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮脇 慎吾 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教(常勤) (70756759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 性決定 / エピゲノム / 代謝 / 生殖腺体細胞 / Sry |
研究実績の概要 |
本年度は、マウスの性決定に関与する代謝関連遺伝子の探索を目的として、性決定期の生殖腺体細胞で高発現する代謝関連遺伝子のノックアウトマウスを作製した。代謝関連遺伝子のノックアウトマウスとJmjd1aコンディショナルノックアウトマウスを交配して、二重欠損マウスを作製し、性決定への影響を評価した。作製した30系統の代謝関連遺伝子ノックアウトマウスの中で、脂肪酸代謝に関連する遺伝子で、性転換効率が変化することが判明した。脂肪酸代謝は、アセチルCoAなどの代謝産物によるヒストンのアセチル化の基質となり、エピゲノムを変化させることによって、遺伝子発現を制御することが知られている。現在、脂肪酸代謝遺伝子の単独欠損マウスで、性決定期の生殖腺体細胞におけるSry遺伝子座のヒストンのアセチル化に焦点を当て、エピゲノム修飾が変化するかを検証を進めている。 マウスの性決定は、Y染色体に存在するSryが胎齢11.5日に一過性に発現することで、オスへ分化することにより行われる。本申請研究はSry遺伝子座におけるエピゲノム修飾を対象としている。これまでSry遺伝子は一つのエキソンで構成される遺伝子であるとされてきたが、Sry遺伝子座を精査する過程で実施したトランスクリプトーム解析の結果から、Sry遺伝子にはこれまでに知られていないエキソンが存在することが判明した。このエキソンを欠損したマウスはオスからメスに性転換を示し、マウスの性決定に必須であることが明らかとなった。現在、申請者が発見した新規エキソンの機能を詳細に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では、哺乳類の性を決定する遺伝子であるSryのエピゲノム制御機構を胎仔の代謝という観点から明らかにする研究である。Sry遺伝子は、哺乳類の性決定を司る遺伝子であることから、Sryの遺伝子構造の全容を解明することは本申請研究のみならず、性決定の研究に必要不可欠である。本申請研究で行った研究を遂行する過程で発見した、Sryの新規エキソンは、マウスのSry遺伝子構造の全容を明らかにする発見であり、性決定研究の進展に大きく寄与する可能性がある。 上記の発見をもとに、Sry遺伝子座のエピゲノム修飾を検証することにより、既存のSry遺伝子座の情報をもとにした研究と比較して、本申請研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究に付随して発見した、Sry遺伝子の新規エキソンの機能解明を進める。遺伝子のクローニング、性決定期の遺伝子発現様式の解析、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によるノックアウト・ノックインマウスの作製を行い、新規エキソンの性決定における役割を明らかにする。また、性決定因子としての機能を示すために、胎仔期の生殖腺体細胞特異的に新規遺伝子を発現するマウスを作製して、XX型の染色体をもつマウスがメスからオスに性転換を示すか検証する。これらの解析の結果、申請者が見出したSryの新規バリアントが性決定因子として機能することを示すことができた場合には、この知見をもとにしてエピゲノム修飾の解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画した研究計画に加えて、本申請研究を実施するために必要不可欠な新たな研究課題が生じた。そのため、本年度は、申請者が見出した真の性決定遺伝子Sry配列の解析に従事したために、申請計画の支出額が減少した。しかしながら、研究計画に変更はないため、次年度は、初年度に使用する予定であった研究試薬を用いた実験を実施し、論文の出版費用を含めて計画通りに使用する予定である。
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