研究課題/領域番号 |
19K16662
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
山本 健太郎 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 研究員 (40832308)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 結核菌 / 薬剤耐性 / 生物物理学 / 抗酸菌 / 発現解析 / 二成分制御系 |
研究実績の概要 |
これまでに結核菌RND型トランスポーターMmpL5が膜融合タンパク質と想定されるMmpS5の存在下で細胞膜上に固定されることを見出した。また,この固定されたMmpL5を蛍光褪色法によって解析した結果,三量体で機能していることがわかった。 さらに,MmpS5とMmpL5が直接的に相互作用している証拠を得るために,MmpS5のペリプラズム領域とMmpL5の全長の精製に着手した。MmpS5はGST-tagとHis6-tagを付加し,大腸菌をホストとしたT7プロモーターを用いることで,安定的な発現系を構築することができた。菌を破砕し,上清をGSTカラムに吸着,HRV3CプロテアーゼでGST-tagを消化することで,MmpS5-His6を精製した。MmpL5(His6-tag付加)については,抗酸菌ベクターpMV261のHsp60プロモーターをアセトアミドプロモーターに組み換えることで,アセトアミドの添加により抗酸菌内で発現誘導可能な系を構築した。具体的にはM.smegmatisをホストにし,低温で24時間の誘導時間を経ることで当該タンパク質を発現させた。 また,pLuxルシフェラーゼアッセイシステムを用いて,結核菌二成分制御系レスポンスレギュレーターの全てについてmmpS5-mmpL5の発現調整機能を行っているか調べた。具体的には大腸菌内で,pLuxシステムを構築,結核菌レスポンスレギュレーターをプラスミドから発現,個別に再構築した。その結果,DevR, MtrA, NarL, PdtaR, Rv0196の5つがmmpS5-mmpL5プロモーターを活性化する可能性が示唆された(1.3倍以上の活性上昇)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MmpS5とMmpL5の結合実験については,タンパク質精製に苦労はしたものの概ね系としては完成している。しかしながら,タンパク質濃縮に用いる限外ろ過膜がコロナ禍の影響により,半年以上入荷待ちの状態であり遅延の一要因となっている。 二成分制御系の実験については,一部のレスポンスレギュレーターは発現誘導の条件によって結果が異なる場合があったり,pLuxの感度が弱いために再現実験が不安定である。このため,系を一部修正する必要が生じ,やや遅延が発生している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在,MmpS5, MmpL5両タンパク質の大量精製と濃縮を計画している。これらが収量良く得られれば,2つのタンパク質を混合し,共沈するかどうかを調べたい。細胞膜貫通ドメインを持つMmpL5は超遠心で沈殿し,MmpS5は上清に分画されるはずである。MmpL5が存在するときのみMmpS5が沈殿に分画されるかを調べることで相互作用を確認する。 安定した実験結果を得るために,ルシフェラーゼをより高輝度・高感度なAka-BLIシステムに変更する作業を行う。また,候補5つのレスポンスレギュレーターをBCGに組込み,強制的に発現させることで薬剤耐性能に変化があるかを調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であったために出張費や学会参加費が発生しなかったことにより大幅に繰越金が生じた。 翌年度の学会参加費や,ルシフェラーゼアッセイ系の改良,Cryo-EMの使用料などに当該金を使用する予定である。
|