研究実績の概要 |
結核菌RND型トランスポーターMmpL5が膜融合タンパク質と想定されるMmpS5の存在下で細胞膜上に固定されることを見出した。また,この固定されたMmpL5を蛍光褪色法によって解析した結果,三量体で機能していることがわかった。さらに,MmpS5-ΔTM(膜貫通領域を欠如)とMmpL5をそれぞれHis-tagでラベルし,M. smegmatisをホストにして発現・精製した。これらのタンパク質は超遠心分離後SDS-PAGEを行うとMmpS5-ΔTMは上清側に,MmpL5は沈殿側に分画される。しかし,MmpS5とMmpL5を混合してから超遠心分離・泳動を行うと,MmpS5が沈殿画分に存在することがわかった。コントロール群としてM. smegmatisの全膜画分をMmpS5と混合して泳動を行ったが,MmpS5は上清画分に分画されたままだった。このことから,MmpS5とMmpL5の直接的な結合が示唆された。また,MmpL5は排出する基質であるベダキリンをMmpS5とMmpL5の混合液に添加すると,ベダキリンの濃度依存的に沈殿画分に分画されるMmpS5の量が増加した。これは基質の存在がMmpS5-MmpL5複合体の安定化,もしくは複合体構築を促進している可能性を示している。 また,MmpSL5の発現制御系を探るため,二成分制御系転写因子であるdevR, mtrA, narL, pdtaRを発現するプラスミドを構築,M. bovis BCGに移入し,ベダキリンとクロファジミンに対するMICを測定した。その結果,devR, mtrA, pdtaR発現BCGにおいて,ベダキリンに対するMICが二倍に上昇,また,narL発現BCGではクロファジミンに対するMICも上昇した。このことから薬剤排出ポンプであるMmpSL5は環境刺激を二成分制御系を介して受容し,その発現を調整している可能性が示唆された。
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