インフルエンザウイルス感染に応答して、気道上皮細胞は免疫的に“サイレント”な細胞死であるアポトーシス、及び積極的に炎症性サイトカインを放出する細胞死であるパイロトーシスを誘導し、感染早期での生体防御を誘導する。本研究では、(1)インフルエンザウイルス感染によって誘導される細胞死経路の決定機構を明らかにする。また、(2)気道上皮細胞特異的なパイロトーシスの誘導に必須な因子群の同定を進め、インフルエンザウイルス感染に対する宿主応答の理解に資する。 令和元年度では、インフルエンザウイルス感染に応答した病原体センサー分子として、インターフェロン誘導性遺伝子であり、ダイナミン様GTPaseであるMxAを同定した。令和2年度では、MxAがインフルエンザウイルスのNPタンパク質を認識することで、ウイルスを非自己として認識し、下流のASCと結合促進することで、パイロトーシスを誘導することを明らかにした。 一方、呼吸鎖を機能欠損したミトコンドリアをもつ細胞株では、インフルエンザウイルス感染に応答して、アポトーシス非依存的であり、且つパイロトーシスにも非依存的に細胞死が誘導されることを令和元年度では明らかにした。令和2年度では、個体レベルでの表現型を明らかにするため、ミトコンドリアを機能欠損したマウス(ミトマウス)を用いた病態解析を行った。その結果、肺以外の臓器でも強い炎症像が認められたが、ウイルス抗原は検出されなかった。ミトコンドリアを機能欠損することで、全身性の強い炎症応答が誘導されていることが示唆された。
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