本研究では、HBs-L抗原免疫によって誘導される免疫応答を解析することで、HBs-L抗原のHBV予防ワクチンとしての評価を行い、新規ワクチンの開発へと繋げることを目的としている。 これまでの研究により、異なる遺伝子型のHBs-L抗原を2種類組み合わせたハイブリッド抗原(HBs-Lh抗原)を用いることで、各遺伝子型1種類のHBs-L抗原免疫時よりも、強力かつ遺伝子型間で交差反応性の高い中和抗体を誘導できることを見出している。そこで、今年度は誘導される抗体についての解析を進めた。pre-S1、pre-S2、S各領域に対する抗体価を評価した結果、全ての領域において、HBs-Lh抗原を免疫することで、HBs-L抗原免疫よりも有意に強く抗体を誘導していた。またpre-S1領域は、遺伝子型間で多様性が高いことから、各遺伝子型pre-S1を用いて抗体価を評価した結果、HBs-Lh抗原免疫個体ではいずれの遺伝子型に対しても、各遺伝子型のHBs-L抗原を免疫した個体よりも高い結果であった。これらの結果から、HBs-Lh抗原は遺伝子型による違いに影響されることなく、HBs抗原の各領域に対する抗体を強く誘導しており、そのことが高力価の中和抗体誘導へとつながっていることが考えられた。続いて、pre-S1、pre-S2、S領域いずれの抗体がウイルスの中和への寄与が高いのか解析を行った。各領域に対する抗体価と中和抗体価に関して、多重線形回帰分析を行ったところ、遺伝子型によって中和に寄与する抗体が異なることが示された。 HBs-Lh抗原はいずれの領域に対しても強力に抗体を誘導することができ、このことがいずれの遺伝子型に対しても高い中和抗体誘導に繋がっているものと考えられ、新規ワクチン抗原として非常に有用であると考えられる。
|