研究課題/領域番号 |
19K16681
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
應田 涼太 北海道大学, 医学研究院, 助教 (90817321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MHC class I / NLRC5 / DNAメチル化 / がん免疫 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
これまで我々の研究グループはMHC class I 遺伝子群のマスター転写因子としてNLRC5を同定し、NLRC5がCD8+T細胞を介した腫瘍免疫において重要な役割を果たしていることを明らかとした。一方、多くの予後不良乳癌患者においてはNLRC5遺伝子が高度にメチル化しNLRC5の発現が低下していた。これらはNLRC5が癌治療の有力なターゲットである事を示唆している。既存の脱メチル化剤は非特異的であるため強い副作用を有し、一部の癌にしか用いることができない。そのため、特異的なDNA脱メチル化技術の開発が長く望まれていた。本研究は、CRISPR/Cas9システムを応用した新しい特異的脱メチル化技術の開発を行うことにより、新しい癌治療戦略の可能性を明らかにすることが目的である。これまで申請者は、①酵素活性能を欠損させたCas9 (dCas9)と脱メチル化酵素TET1を融合させた発現ベクター (dCas9-TET1) ②遺伝子特異的なガイドRNA発現ベクター (sgRNA) ③sgRNA特異的に結合するバクテリオファージ由来MS2 coat proteinと脱メチル化酵素TET1を融合させた発現ベクター (MS2-TET1)を作製した。これら3つの発現ベクターをレンチウイルスによってMCF7細胞へ導入することによりNLRC5脱メチル化が確認できた。本年度は脱メチル化効率の向上を目指し1)sgRNAシークエンスの最適化 2)複数のsgRNAの使用 3)他の脱メチル化酵素の単独・同時使用を行い、バイサルファイトシークエンス法によってNLRC5遺伝子脱メチル化の成否を解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では以下の研究を行った。 1) 乳がん細胞in vitro における遺伝子特異的脱メチル化技術の確立 NLRC5プロモーター領域特異的gRNAを用いた脱メチル化に最適なシステムとして、dCas9-TET1cdシステムを用いた。MS2-TET1cd 付与によりDNA脱メチル化効果が高まることが確認された。 2) 遺伝子特異的脱メチル化技術の改良 将来的なin vivoへの応用を考慮し、現在使用している3つの発現ベクターを1つに組み込む改良を行った。bisulfate sequencingを行い、NLRC5遺伝子脱メチル化を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下に示すように、脱メチル化技術のin vivoへの応用を目指す。 (1) マウス乳癌細胞株(E0771)を同系のC57BL/6マウスに移植し、CRISPR/Cas9技術に基づく脱メチル化酵素を隔日ごとに腫瘍内に経皮投与し、腫瘍サイズ、生存曲線を求める。この実験により、in vivo におけるDNA脱メチル化技術の確立を目指す。 (2) 免疫チェックポイント阻害剤の効果はMHC class I における抗原提示、それに続くCD8+T細胞の活性化が必要である。よって、NLRC5の発現が免疫チェックポイント阻害剤の効果に必須であることが考えられる。そこで、NLRC5遺伝子の脱メチル化を行ったマウスに免疫チェックポイント阻害剤を投与し、その効果を腫瘍サイズ、生存率によって評価する。この実験により、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果の拡大を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスモデルを用いて更なる解析と応用のため申請期間の1年延長を申請した。 使用計画として、マウス維持管理費、マウスに薬剤を注入するためのシリンジ、針、薬剤として抗PD1抗体に対して使用する予定である。
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