研究課題/領域番号 |
19K16824
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高田 護 千葉大学, 総合安全衛生管理機構, 助教 (90800392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗腫瘍効果 / 増殖抑制効果 / 有害事象 / 新規抗がん剤 |
研究実績の概要 |
申請者の近年の研究は、細胞周期M期における染色体分離メカニズムおよび癌における染色体不安定性メカニズムの解明とそこを標的とした新規標的治療の開発を目指したものである。染色体分離機構は真核生物の研究の歴史が古い分野の一つであるが、がんがいかにして染色体不安定性を呈するのか、染色体不安定性を有する癌細胞がなぜNecrosis, Apoptosisを回避し、悪性度の高い形質を有した状態で細胞分裂機構を維持できるのかは未だに明らかになっていない。そのためさまざまな癌種の中でも染色体不安定性が最も顕著な乳癌において微小管機能を研究することは理想的な治療に直結すると期待される。申請者はこれまでの研究活動の中でCMPD1が高度に微小管機能を阻害することを見つけ、本研究の成果として微小管機能阻害効果がPaclitaxelの一万倍強いこと、そのメカニズムの主体がMK2を介すること、 CMPD1の阻害するMK2はMurineとHumanでは相同性が認められないことを明らかにした。今後本薬剤を用いた研究を通して染色体分配機構の解明および新たな標的治療薬の開発が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスのパンデミック及び、さらなる感染の拡大を防ぐために、本学でも全発熱学生・職員のモニタリング、有症状者ガイドライン作成、消毒・換気等のガイドライン作成など職員・学生の安全を確保し、感染拡大を抑制する上で欠かせない活動に伴う所属機構の業務が膨大に増え、研究活動に前例のない長期的な影響があった。そのため本研究は長期にわたり中断を余儀なくされ、一昨年度は極めて良好な進捗を見せていたものの、昨年度の活動の停滞により計画の遅延を認めた。緊急事態宣言後に細胞培養を開始し、動物実験の再開を試みたが、培養器の不具合からさらに計画は遅れ、動物実験に関しても飼育舎使用制限がかかり、その後解除されるも再び使用制限が再開する恐れがあることが案内されたため、動物実験の再開にも大きな遅延が生じてしまった。そのため、一部研究計画を変更し、現在その計画に則って活動を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はこれまで種々のin vitro assay, in vivo assayを終えている。申請書計画(5)のマウス乳癌発癌モデルを用いてCMPD1暴露が乳癌の発癌・浸潤の過程においてどのような変化をもたらすかを検討するための乳癌動物モデルを用いた実験は、当初乳癌の各サプタイブを模する乳癌発がんモデルマウス(MMTV-PyMT transgenic mice、MMTV/neu mice、C3Tag mice)を用いて生後4 週前後からCMPD1 暴露を開始し、コントロール群と比較する予定であったが、新型コロナ感染症拡大防止措置に関連し、実験動物の定期的な健康観察および長期飼育が途上で中断を余儀なくされる可能性があるため、短期間に評価が可能なin vivo実験としてMDA MB 231細胞によるorthotopic xenograftモデルに変更し、動物実験倫理審査を行い、令和3年度中に実施し、結果をまとめた上で学術雑誌に投稿予定である。さらにCMPD1は複数のsignal pathwayに影響を与えることが示唆された。これは近年報告されている分子標的薬の中で同様の薬効の薬剤にもかかわらず全生存率(OS )に有意差を持って有効性が示された薬剤が複数のsignal pathwayに影響を与えていたことが注目されているabemaciclibと類似した現象であると思われた。微小管安定性維持機能を解明する上でも特に注目すべきこの作用機序をさらに明らかにすべく計画を立てていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスパンデミックによる感染拡大予防措置等により研究活動が大幅に制限されたことに加え、大学職員学生の健康観察、感染予防対策立案等の所属機関での業務が大幅に増加したことが影響し、研究活動計画の大幅な変更を余儀なくされたたため。
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