申請者の近年の研究は、細胞周期M期における染色体分離メカニズムおよび癌における染色体不安定性メカニズムの解明とそこを標的とした新規標的治療の開発を目指したものである。染色体分離は微小管の働きによりM期に起こり、娘細胞に均等に分配される。抗がん剤である微小管阻害剤は最も歴史の古い薬剤のうちの一つであるが未だに抗がん剤の主役の一つである。近年は分子標的薬の開発が著しいが、微小管阻害剤は免疫チェックポイント阻害剤の併用薬として最も有用な薬剤となっており、ますますその重要性が認識されているにもかかわらず、新たな微小管阻害剤開発は進んでいない。本研究において、CMPD1は新たな微小管阻害剤としての重要性が確認されたのみならず、これまでの微小管阻害剤にはない新たな抗腫瘍メカニズムを確認するに至った。CMPD1は乳がんのキードラッグとして実臨床でも頻繁に使われているTaxolと比較して極低濃度で同程度の微小管阻害効果を確認することができた。さらにCMPD1の阻害するMK2はMurineとHumanでは相同性が認められないことを明らかにした。また、書く細胞周期において異なる運動性を細胞に与えることを見出し、乳がんの浸潤能に大きな影響を与えることも見出した。乳癌xenograft mouse modelを用いた研究ではTaxolと比較して強力な微小管阻害効果に加え、さらに脈管侵襲を有意に減らす効果があることを確認した。今後本薬剤を用いた研究を通して染色体分配機構の解明および新たな標的治療薬の開発を目指していく。
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