研究実績の概要 |
非小細胞肺がんの治療においては、活性型EGFR遺伝子変異とともに耐性変異であるT790M変異を標的とした第3世代EGFR-TKIオシメルチニブが、初回治療において 使用されている。しかしまだその耐性機序は明らかにされていない。近年、リキッドバイオプシーと呼ばれる血中循環DNAを利用したバイオマーカー検出が、組織検体の代替法として期待されている。本研究は高感度検出法であるデジタルPCRを用いて、初回治療としてオシメルチニブ治療を受ける患者の実臨床検体を用いた前向き観察研究により、血中バイオマーカーとオシメルチニブの治療効果との関係や耐性機序を明らかにすることを目的とした。登録症例を対象として治療開始前、治療開始1か月後、増悪時の3ポイントで採血を行い、血漿、血清を分離の上で院内のバイオバンクに保管している。保管した血漿については、市販のコバス社のDNAサンプルプレパレーションキットを用いてcell free DNAとして抽出し、院内のバイオバンクに保存している。cfDNAはBioRad社製のデジタルPCR(QX200 Droplet Digital PCRシステム)を用いて血中EGFR DNA量を測定している。EGFR遺伝子変異陽性患者の治療効果予測を行う研究の一環として、多施設共同の後ろ向き観察研究を行い、論文執筆を行い出版された(N Kasahara, Thorac Cancer 2020)。またT790M陽性患者を対象としてオシメルチニブ治療効果と血中EGFR濃度を調べたところ、増悪時における血漿中T790Mの検出は、オシメルチニブ投与後の予後悪化の有意な予測因子として同定された。本研究については、第62回肺癌学会と第25回アジア太平洋呼吸器学会学術集会にて発表を行っており、現在論文化を進めている。
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