神経障害性疼痛は,触刺激でさえ激烈な痛みとして感じてしまう病的な慢性疼痛疾患であるが,その発症維持機構は未だ不明な点が多い。一方,細胞膜を構成するリン脂質は多様で1000分子種を超えるが,多様性を生む生体分子リゾリン脂質アシル転移酵素(LPLATs)が近年複数同定されている。本研究では,神経障害性疼痛病態時における末梢および中枢神経系組織の膜リン脂質組成と脂質メディエーター量の変化,さらに,複数系統のLPLAT遺伝子欠損マウスにおいて疼痛症状が軽減する可能性を見出した。今回の成果は,有効な治療薬の存在しない神経障害性疼痛に対してLPLATsが新しい治療標的となる可能性を示唆している。
|