研究課題/領域番号 |
19K17108
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳倉 達也 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20378136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身体症状症 / 疼痛が主症状のもの / 慢性疼痛 / 治療反応性 / 生物学的因子 / 心理社会的因子 / 口腔内灼熱症候群 / 持続性特発性顔面痛 |
研究実績の概要 |
本研究は、口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者を対象に、疼痛(強さ・性質)、生物学的因子(血中神経炎症関連物質)、心理社会的因子(抑うつ、QOL、社会的サポート、人格傾向、養育体験)を、治療前から治療後最長3年間にわたって複数時点で測定し、治療反応性予測因子を同定することを目的としている。本課題の研究期間は2019年度~2022年度の合計4年間であり、3年目にあたる今年度の進捗実績を以下に記載する。 1. 新規症例の集積:口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者群15例を新規登録し、血液検体及び各種評価尺度の収集を行った。0週に加えて、12週後、6ヶ月後、1年後、2年後、3年後時点のデータ収集も順次継続している。 2. セロトニントランスポーター(SERT)との関連についての報告:収集済みの検体と合わせて口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者33名の血漿採取を実施し、疼痛の重症度とユビキチン化SERT発現との関連について解析を行った。その結果、抗うつ薬Duloxetineによる疼痛軽減がSERT発現のダウンレギュレーションと関連していることが示唆され、その結果について学会での報告(日本臨床精神神経薬理学会, 2021)と英語論文の発表(Hum Psychopharmacol, 2021)を行った。 3. その他:これまでの研究で得られた知見を踏まえ、口腔顔面痛患者の心理社会的評価について執筆した(日口腔顔面痛会誌, 2021)。また、本研究中に、抑肝散が奏功した口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)の症例を経験したため学会報告を行った(日本疼痛漢方研究会, 2021)。本研究の解析対象とはならなかったが、抜歯周術期の集学的管理を要した22q 11.2欠失症候群患者も経験したため英語論文を発表した(Clin Case Rep, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19感染拡大に伴う診療制限等の診療状況の変化に伴い、対象患者のエントリー数が当初の想定より少ない時期があったが、新規症例の登録は着実に進んでいる。血中神経炎症関連物質、疼痛、抑うつ、QOL、社会的サポート、人格傾向、養育体験などの各種評価項目について、測定および予備的解析を順次進めることができており、結果の一部は英語論文の形で発表を行うことができている。 スピッツ等の器具や測定のためのマルチプレックス測定キット・蛍光抗体法測定キットは、次年度に購入を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新規患者30~50症例(現在30症例)の集積を目標に、次年度も新規症例登録を継続する。新規症例集積のペースはCOVID-19感染拡大状況の変化にも左右されるため推測が難しいが、現行のペースでの集積継続は可能な見込みである。なお、新規登録が想定より少ない場合には、愛知学院大学歯学部附属病院内で研究啓発を行い、登録を募る予定である。 症例の集積が進むことで、6か月後、1年後、2年後、3年後といった長期経過と各種評価尺度との関連についての検討が可能となる。次年度は、身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者の人格傾向と治療経過との関連について、集積されたデータを用いて解析を行い、論文化を目指す予定とする。QOLや社会的サポートなどについても、解析を順次進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、COVID-19感染拡大状況によって新規症例数が減少した時期の存在等の理由により、スピッツ等の器具や測定のためのマルチプレックス測定キット・蛍光抗体法測定キットなどの購入が当初予定していたほどは必要とならず、1,851,673円を次年度に持ち越した。 次年度は、上記器具やキットの購入、統計解析に要する費用、学会発表に要する費用、論文作成に要する費用に使用する計画を立案している。
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