研究実績の概要 |
本研究は、口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者を対象に、疼痛(強さ・性質)、生物学的因子(血中神経炎症関連物質)、心理社会的因子(抑うつ、QOL、社会的サポート、人格傾向、養育体験)を、治療前から治療後最長3年間にわたって複数時点で測定し、治療反応性予測因子を同定することを目的とした。本課題の研究期間は、1年の延長申請を行ったことにより2019年度~2023年度の合計5年間となり、最終年度の5年目にあたる今年度の進捗実績を以下に記載する。 1. 新規症例の集積:口腔領域の身体症状症(疼痛が主症状のもの)患者群17例を新規登録し、血液検体及び各種評価尺度の収集を行った。0週に加えて、12週後、6ヶ月後、1年後、2年後、3年後時点のデータ収集も順次継続し、今年度で収集を終了した。 2. 生活の質(QOL)との関連についての報告:QOLの評価尺度であるSF-8を用いて患者群(治療前後)と対照群との比較を行った。12週後の時点で、患者群の身体的QOLは改善するものの対照群の水準に及ばないが、精神的QOLは対照群と同等の水準まで改善することが示された(Cureus, 2023)。 3. セロトニントランスポーター(SERT)に関する報告:患者群の血漿検体を用いて0週と12週における血小板SERT蛋白の発現に関する解析を行った。その結果、抗うつ薬Duloxetineがユビキチン化SERTのアップレギュレーションを介して血小板SERT蛋白を減少させることにより疼痛及び併存する抑うつ症状を改善することが示された(Pain, 2024)。 4. その他:これまでの研究で得られた知見を踏まえ、口腔領域をはじめとする身体症状症患者の診断と治療について概説した(診断と治療, 2024)。また、本研究中に経験した帯状疱疹後神経痛の症例について論文を発表した(日本口腔顔面痛学会雑誌, 2024)。
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