近年、体表面モニターを用いて患者位置合わせを行う手法が普及してきたが、本研究では、体表面モニターを用いた低侵襲(無被ばくかつマーカーレス)な呼吸管理による新規放射線治療を実現することを目的とした。 最終年度も、体表モニターを用いて体内位置を予測する複数のアルゴリズムの開発に着手した。その一つとして、研究代表者がこれまでに取り組んできたDeformable image registration(DIR)を用いた体表面移動のベクトルマップを算出し体内移動を予測する手法をさらに精査し、肺がん放射線治療の息止め画像に適応することに成功した。これらの研究成果は分野の国際誌(Medical Dosimetry)にPublishされた。また、同手法は息止め下CT画像以外にも、4次元断層画像にも適応可能であることも明らかにした。また単純な相関予測以外にも、さらなる高精度な予測手法として、機械学習を用いた体表位置から体内位置を予測するアルゴリズムの開発にも取り組み、健常ボランティアのMRI画像を用いた検証を実施した。これらの予測技術は呼吸管理を必要とする放射線治療において、臨床的価値の非常に高い研究であり、今後の研究の礎となることが予測される。 加えて、研究期間内には開発した予測アルゴリズムを含めた新規放射線治療システム全体を検証するための検証ツール(動体ファントム)の開発にも着手した。本ファントムは体表と体内の動きを再現するために複数の駆動系を有しており、それぞれの駆動部を頭尾方向、左右方向、腹背方向の3軸に対して、ソフトウェアに読み込んだ任意の呼吸の波形通りに動かすことが可能である。将来展望として、本ファントムを用いたシステム全体の検証を実施することが期待される。
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