PD-1 抗体で治療を行う肺がん患者計60 名から治療前後のタイミングで血液を採取し、血漿と免疫細胞を単離し、代謝産物とリンパ球マーカーの評価を行い、治療効果との相関を調べた。 血中エネルギー代謝関連の代謝産物が低いことや血中腸内細菌関連代謝産物が高いことなどが、PD-1 抗体の治療効果と相関した。しかし1 つずつの代謝産物での予測率は最高でAUC 0.82(治療後の馬尿酸)と十分に高いとはいえなかったため、統計学的手法を用いて複数の測定項目の組み合わせによるバイオマーカーの確立を期した。その結果、治療前の馬尿酸(腸内細菌関連代謝産物)、PD-1 抗体治療後のシスチンとGSSG(レドックス関連代謝産物)、ブチリルカルニチン(ミトコンドリア関連代謝産物)を組みわせることでAUC 0.91 の予測率を達成できた。 リンパ球マーカーに対しても、代謝産物と同様の解析を行った。投与前のPD-1high CD8+ T 細胞の割合(疲弊T細胞を反映)とCD8+T 細胞ミトコンドリア活性酸素種、治療前後のCD4+T 細胞の変化率とCD8+T 細胞のPGC-1(ミトコンドリアのキーレギュレーター) の変化率を組みわせることでAUC 0.96 と非常に高い予測率を達成できた。 なお、新たにPD-1 抗体で治療を行う肺がん患者計30名から同様に血液を採取し、上記の組み合わせバイオマーカーでPD-1抗体の治療効果を予測できる事も確認した。 本研究内容は論文発表(Hatae et al. JCI insight 2020)と、第78 回日本癌学会や第23 回日本がん免疫学会総会、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表を行い、各種メディアでも取り上げられた。
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