研究課題
T細胞上に発現する PD-1とそのリガンドである PD-L1は、最も広く研究されている抑制性共刺激分子であり、PD-L1/PD-1の作用により、T細胞からのサイトカイン産生や細胞増殖などが抑制され、過剰な炎症反応をコントロールしている。がん細胞はPD-L1を多く発現し、宿主のT細胞活性化を抑制することで、抗腫瘍免疫を回避する機構を備えているが、近年実用化されがん治療に効果を挙げている抗PD-1抗体は、抑制性シグナルの伝達をブロックしてT細胞の活性化を維持し、抗腫瘍効果を回復させることで知られる。抗PD-1抗体の効果予測因子として、PD-L1の測定は有用である。今年度は、このPD-L1/PD-1系と血管炎の病態との関連に特に焦点を当て、血管炎患者と健常人コントロールから得られた血液中の可溶性PD-L1の測定をchemiluminescence enzyme immunoassayを用いて行った。 血管炎患者では、血液中の可溶性PD-L1値が上昇していることを見出した。また、血管炎患者と健常人コントロールから得られた末梢血よりPBMCを分離し、各種免疫チェックポイント分子をフローサイトメトリーで解析した所、血管炎患者では健常人と比べて末梢血T細胞のPD-1などの免疫疲弊に関与する分子の発現が上昇していることが示された。一方、血管炎に罹患している血管を含む皮膚組織についても、フローサイトメトリー、PCR、免疫染色等で解析したところ、末梢血とは異なる免疫チェックポイント分子のprofileを示すことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
検体収集と、データ解析を概ね順調に遂行できた。
現在、得られた解析データの更なる解析を進めており、論文投稿準備中である。来年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により学会発表の機会が無かったが、今年度は得られた成果を学会発表・学術雑誌への論文投稿により公表していきたい。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、研究活動に若干制限が加わったり、国内外での学会参加をほとんど行うことができなかったたため、残金が発生した。来年度は、研究成果をまとめて、今年度行えなかった学会発表等を積極的に行いたいと考えている。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
JMA Journal
巻: 3 ページ: 182-192
10.31662/jmaj.2020-0019
The Journal of Dermatology
巻: 47 ページ: e276-e278
10.1111/1346-8138.15350
Clinical and Experimental Rheumatology
巻: 38 ページ: 161-165