研究代表者の所属施設の移籍に伴い、新たな施設で当初予定していた項目を検討することが困難であった。このため、本年度も免疫チェックポイント分子発現の変化に寄与し得る病原体と皮膚血管炎の関係に着目した研究を行った。 血管炎の病態と様々な微生物との関連が示唆されているが、原因となる微生物やそのメカニズムは解明されていない。メタゲノムショットガンシークエンスを用いて、血管炎患者由来皮膚および血清中の微生物ゲノムを解析し、血管炎の病態に関与する微生物の検索を行った。 血管炎患者から血清および皮膚組織を採取し、次世代シークエンサーを用いて微生物由来遺伝子の網羅的解析を行い、健常人由来検体と比較した。 血管炎患者由来の血清および皮膚において、健常人と比較しSENウィルスのリード数が増加していた。特に、皮膚動脈炎患者の血清ではSENウイルスのリード数が増加していた。定量PCRにて血清のSENウイルス陽性率を比較した所、血管炎患者の76.5%、健常人の40%でSENウイルスが陽性で、血管炎患者では健常人と比較してSENウイルスが検出されやすい傾向がみられた。ユークリッド距離に基づく主成分分析を用いて血清のβ多様性を調べたところ、血管炎と健常人の間に差のある傾向が見られた。また、同定された細菌叢について、群間比較解析を用いて分析したところ、血管炎患者の血清で顕著に増加していた細菌はCorynebacterialesであった。 血管炎患者由来の血清と皮膚では、健常人と比較して微生物叢の変化がみられ、微生物感染が血管炎の病態に関与している可能性が示された。
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