本研究の目的は、「塩基性線維芽細胞増殖因子(以下bFGF)は術後代償性肺成長に関与しているのか」という問いを、術後肺機能予測および治療の側面から明らかにすることである。bFGFと代償性肺成長の関連が明らかになることで、術後肺機能・合併症リスクが正確に予測できると同時に、代償性肺成長を促し術後肺機能が改善することで低肺機能のため標準手術を断念していた患者の手術適応を拡大されることに寄与できると考えている。
上記を明らかにするため、研究計画においては、「bFGFの代償性肺成長予測因子としての有用性の検討」「術後bFGF投与による代償性肺成長促進効果の検討」を3年間で行うこととしていた。しかしながら、新型コロナウイルス流行の影響により、協力研究施設(研究者の所属施設より遠方の施設)でのラット用CT撮像が困難となった。 当該年度(2021年度)においては、「bFGFの代償性肺成長予測因子としての有用性を検討する」ため、昨年度に引き続き「ラット代償性肺成長モデルの作成」(全身麻酔・右開胸下・人工呼吸管理下に右後葉および副葉の摘出を行い2週間経過観察し残存肺の代償性肺成長を促す。摘出された右前葉および中葉の肺重量を求める)を継続して行った。新たな代償性肺成長の指標として、「右肺重量/体重比(以下LBR)」を使用することとした。肺切除を行っていないラットと、代償性肺成長モデルのLBRを比較したところ、代償性肺成長モデルのLBRは大きい傾向が見られ右後葉および副葉切除によって代償性肺成長が促されていることが示唆された。さらに代償性肺成長モデル群を、「代償性肺成長良好群」と「代償性肺成長不良群」にわけ、肺組織採取時の血中bFGF濃度および組織学的所見の比較検討を追加し、代償性肺成長とbFGFの関連に関して検討を継続している。
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