研究課題
免疫療法はすでにいくつかの悪性腫瘍で有望な治療法の1つとなっており、脳腫瘍領域においても今後の発展が期待される。通常、免疫療法に関する動物実験では実験動物由来の腫瘍細胞株を同系移植したモデルが用いられる。しかし、「ヒト」悪性脳腫瘍に対する免疫療法を確立するためには、「ヒト」由来の脳腫瘍細胞を用いて作成した「ヒト」免疫系を持つ実験動物を用いて実験することが望ましいと考えられる。本研究ではそのような免疫系ヒト化担脳腫瘍PDXマウスモデルを作製し、これを用いて実際に各種免疫療法(WT1ペプチドワクチン療法、PD-1抗体療法 等)を試し、既存の動物実験モデルを用いた実験結果や臨床試験での解析結果と比較して、相違を明らかにすることを目的とする。本年度は過去のWT1ペプチドワクチン療法の臨床研究で得られた腫瘍組織検体の追加解析を行い、論文を執筆した。現在は共同研究者との間で校正を行なっている。さらに、既存の同系移植マウスモデルに対するWT1ペプチドワクチン・PD-1抗体併用療法の有用性を検証する実験で、追加実験を行った。現在は論文執筆中である。さらに放射線治療と免疫療法を併用する実験系も準備中である。最終的には上述の2つの実験結果と免疫系ヒト化担脳腫瘍PDXマウスモデルを用いた実験結果を比較する予定である。免疫系ヒト化担脳腫瘍PDXマウスモデルの作製については、まずWT1発現量の多い神経膠腫を用いた悪性神経膠腫PDXの作成を行った。このPDXに蛍ルシフェラーぜ遺伝子を導入中である。
3: やや遅れている
臨床研究で得られた腫瘍組織検体の解析や既存の同系移植マウスモデルを用いた実験について、論文投稿にあたり追加解析や追加実験が必要となったため。さらにCOVID-19の影響で実験に制限があり、免疫系ヒト化担脳腫瘍PDXマウスモデルの作製が遅れている。
既存の研究について早期の論文投稿を目指す。また、引き続き悪性神経膠腫PDXの作製を進める。同時に、免疫系ヒト化マウスの作製も開始する。
免疫系ヒト化担脳腫瘍PDXマウスモデルの作製が遅れているため次年度使用額が生じた。次年度はこれまでの実験結果を解析するためのパソコン・ソフトウェアの購入費、学会発表の旅費、論文投稿に関わる費用、動物実験施設利用料、実験動物購入費、細胞培養用消耗品、各種試薬購入費、などに使用する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Scientific reports
巻: 9 ページ: 14435
10.1038/s41598-019-50849-y