破骨細胞に影響を与える骨肉腫細胞由来エクソソーム内分子の解明

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K18529
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 荒木 麗博 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (10800625)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 骨肉腫 / 破骨細胞 / 骨微小環境の変化 / 転移 / TRAF6 / miRNA146a-5p / 弾性線維関連蛋白

研究実績の概要

私たちはこれまでの研究結果から、骨肉腫の発生した骨微小環境において破骨細胞の分化が抑制されており、その機序として骨肉腫細胞由来エクソソーム内の分子miRNA146a-5pが、前破骨細胞内でTRAF6の産生を抑制し、その下流のNFκB経路の蛋白のリン酸化を抑制、さらにその下流で転写因子のNFATc1の働きが抑制されて前破骨細胞の融合が阻害されていることを見出しました(Araki Y, et al. Front Oncol. 2021; 11: 667109)。また患者検体において破骨細胞の分化が抑制されているほど、化学療法の有効性が乏しく(Araki Y, et al. Sci Rep.2021; 11(1): 1989)、転移や進行が早いために予後不良となりやすいことを示し、in vivoにおいてエクソソームの分泌に関与するTSG101遺伝子をノックアウトした骨肉腫細胞のマウス移植実験で、腫瘍細胞周囲の破骨細胞の分化が有意に維持され、肺転移の数及び面積が有意に減少していることを確認しました。さらに骨肉腫細胞由来エクソソーム内の蛋白に関して質量分析を行ったところ、易転移性細胞株にはヤング率の低い弾性線維関連蛋白が多く含まれていることを見出しました（Yurtserver A, et al. Nanoscale.2021;13(13):6661-77. Araki Y.:共著者）が、転移に関連する蛋白をひとつに特定することは困難でした。
以上のことから、本研究において、骨肉腫細胞由来エクソソーム内のmiRNA146a-5pが破骨細胞の分化を抑制し、ヤング率の低い弾性線維関連蛋白により転移が促進されている可能性を示しました。今後、これらのエクソソーム内分子が悪性度や予後マーカーとして臨床応用が可能か、また治療ターゲットとなりうるか、その有用性を評価していく必要があると考えます。

研究成果

• [雑誌論文] Osteosarcoma-Derived Small Extracellular Vesicles Enhance Tumor Metastasis and Suppress Osteoclastogenesis by miR-146a-5p (2021)
  • 著者名/発表者名: Yoshihiro Araki, Hisaki Aiba, Takeshi Yoshida, Norio Yamamoto, Katsuhiro Hayashi, Akihiko Takeuchi, Shinji Miwa, Kentaro Igarashi, Tuan D. Nguyen, Kiyo-aki Ishii, Takayuki Nojima, Satoru Takahashi, Hideki Murakami, Hiroyuki Tsuchiya and Rikinari Hanayama
  • 雑誌名: Frontiers in Oncology 巻: 11 ページ: 667109
  • DOI: 10.3389/fonc.2021.667109
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] The number of osteoclasts in a biopsy specimen can predict the efficacy of neoadjuvant chemotherapy for primary osteosarcoma (2021)
  • 著者名/発表者名: Yoshihiro Araki, Norio Yamamoto, Katsuhiro Hayashi, Akihiko Takeuchi, Shinji Miwa, Kentaro Igarashi, Takashi Higuchi, Kensaku Abe, Yuta Taniguchi, Hirotaka Yonezawa, Sei Morinaga, Yohei Asano, Hiroko Ikeda, Takayuki Nojima, Hiroyuki Tsuchiya
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 11(1) ページ: 1989
  • DOI: 10.1038/s41598-020-80504-w.
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Structural and mechanical characteristics of exosomes from osteosarcoma cells explored by 3D-atomic force microscopy. (2021)
  • 著者名/発表者名: Ayhan Yurtsever, Takeshi Yoshida, Arash Badami Behjat, Yoshihiro Araki, Rikinari Hanayama and Takeshi Fukuma
  • 雑誌名: Nanoscale 巻: 13 ページ: 6661-77
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] Molecular mechanism for suppression of osteoclastogenesis by osteosarcoma cell-derived extracellular vesicles (2021)
  • 著者名/発表者名: Yoshihiro Araki, Norio Yamamoto, Katsuhiro Hayashi, Akihiko Takeuchi, Shinji Miwa, Kentaro Igarashi, Takashi Higuchi, Kensaku Abe, Yuta Taniguchi, Hirotaka Yonezawa, Sei Morinaga, Yohei Asano, Hiroyuki Tsuchiya
  • 学会等名: 13th Asia Pacific Musculoskeletal Tumor Society
  • 国際学会
• [学会発表] 骨肉腫細胞由来エクソソームが破骨細胞の分化に及ぼす影響とその機序 (2020)
  • 著者名/発表者名: 荒木麗博、山本憲男、林克洋、武内章彦、三輪真嗣、五十嵐健太郎、樋口貴史、米澤宏隆、森永整、淺野洋平、土屋弘行
  • 学会等名: 第93回日本整形外科学会学術総会
• [産業財産権] 骨腫瘍の予後診断方法又は予後診断補助方法 (2021)
  • 発明者名: 土屋弘行、華山力成、山本憲男、吉田孟史、荒木麗博
  • 権利者名: 土屋弘行、華山力成、山本憲男、吉田孟史、荒木麗博
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: 2021- 77371