研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺癌に対し、近年、新規内分泌・化学療法が使用可能となったが、各治療には交叉耐性や副作用が存在し、依然難治症例が多く存在する。よって、前立腺癌において既存の化学内分泌両治療抵抗性機序解明は急務であり、新規治療標的同定の鍵を握る。我々はこれまでのpilot研究から前立腺癌化学内分泌療法耐性に癌微小環境変化とHippo経路活性が重要である可能性を見出している。さらに近年の報告から、細胞微小環境による細胞内Hippo経路制御が明かとなりつつある。上記より我々は前立腺癌化学内分泌療法抵抗性において癌微小環境が細胞内Hippo経路を制御し、癌増悪進展に関与すると仮説を立て研究を進めた。前立腺全摘患者検体でYAP1核内高発現が薬剤耐性および化学内分泌療法後前立腺全摘を施行した前立腺癌患者の予後因子になることを、2名の病理医によるvalidationにより再確認し、結果を報告した(Matsuda Y, Narita S, Nara T, et al. BMC Cancer. 2020 Apr 15;20(1):302.) 。また、YAP/TAZ経路が腫瘍免疫に重要な働きを与えていることが報告されたため(Pan, Mol Cancer Res, 2019)、前立腺癌発症マウスモデルで腫瘍周囲微小環境とくに免疫環境と癌増殖の関連を検討し、前立腺癌増悪モデルでは制御性T細胞が減少し、CD8陽性キラーT細胞が増加していることを見出した(Sato, Nara, The 115th Annual Meeting of the American Urological Association 2020。)。さらに同モデルを用いてRNA、蛋白レベルでHippo経路と腫瘍免疫環境の関連を検討した。
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