研究実績の概要 |
近年,難治性根尖性歯周炎に対する新規治療法の開発研究が行われており,その一つとして,高周波を用いた高周波根尖療法がある。しかし, その作用機序は未解明である。本研究では,ラット感染根管治療モデルを用いて高周波根尖療法の治癒促進メカニズムを解明するとともに,ランダム化比較試験によるヒト臨床研究にて高周波根尖療法の根尖病変の治癒促進に対する有効性を評価することを目的とした。 本年度は,in vitroおよびin vivoにおいて高周波根尖療法の有用性の評価を行った。 ラット根管治療モデルによる高周波根尖療法の評価は,10週齢雄性Wistar系ラットを用い,ラット下顎両側第一臼歯に根尖性歯周炎を誘発し,高周波通電群,通常根管治療群,対照群の3 群に分類した。近心根の根尖病変体積をマイクロCT撮影にて算出したところ高周波通電群の根尖病変は有意に縮小した。リアルタイムPCRによる根管内総細菌数とATP assayによる生細菌数は高周波通電による効果を認めなかった。IL-1β,FGF2,TGF-β1に対する特異抗体を用いた免疫組織化学的検索では, FGF2およびTGF-β1について, 高周波照射群で非照射群と比較して明らかに多くの陽性細胞を発現した。Enterococcus faecalis SS497, Streptococcus mutans 10449, Fusobacterium nucleatum 1436, Porphyromonas gingivalis 381 and Prevotella intermedia ATCC 25611の各菌株のバイオフィルムをハイドロキシアパタイトディスク上に作成し,高周波通電後,ATP測定による生細菌数定量と共焦点レーザー顕微鏡による形態学的観察により評価したところ,有意なバイオフィルム抑制効果は認めなかった。
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