研究実績の概要 |
難治性根尖性歯周炎に対して,様々な新規治療法の開発研究が行われており,その一つとして,高周波を用いた高周波根尖療法がある。申請者らは,高周波根尖療法が根尖病変の治癒を促進する作用機序の解明のため, 本研究では,ラット感染根管治療モデルを用いて高周波根尖療法の治癒促進メカニズムを解明することを目標に,ランダム化比較試験によるヒト臨床研究にて高周波根尖療法の根尖病変の治癒促進に対する有効性を評価することを目的とした。 2020年度は,in vitroにおいてバイオフィルムに対する高周波根尖療法の有用性の評価を再検討し,さらにランダム化割付ヒト臨床試験による高周波根尖療法の治癒促進効果の評価を行った。口腔細菌5種の各菌株のバイオフィルムを直径6mmのハイドロキシアパタイトディスク上に作成し,高周波(35V, 100V)通電後,ATP測定による生細菌数定量と共焦点レーザー顕微鏡による形態学的観察により評価した。その結果,ヒト臨床研究で用いる100V 通電時において有意な抗バイオフィルム効果を認めた。ヒト臨床研究に関しては,大阪大学歯学部附属病院保存科にて根管治療が必要と判断され,コーンビームCT (CBCT)で根尖から歯軸方向に5 mm以上の根尖病変が存在すると診断された単根管歯を有する研究参加の同意が得られた外来患者を対象とし,乱数関数を用いて,根尖孔外高周波通電群または根管内高周波通電群または非通電群に割付けを行った。現在,症例の収集途中であり,24症例収集後,デンタルエックス線写真およびCBCTを撮影し、当該歯の根尖病変の状態を評価予定である。 本研究より,高周波根尖療法は,宿主側の根尖周囲組織の細胞増殖因子を誘導し、根尖病変の治癒を促進することが明らかとなった。 以上より,高周波根尖療法が根尖性歯周炎に対する非外科的な治療法の一つとして有用であることを示した。
|