尿道留置カテーテル関連感染症(CAUTI)は発生頻度の高い医療関連感染症(約30%)で、「ケアバンドル」の導入によりCAUTIの多く(約70%)が予防可能とされているが、日本の臨床現場においては、包括的なCAUTI予防ケアバンドルが導入されている施設は少ないようである。そこで本研究では、ミシガン大学Saint教授を中心に開発された「尿道カテーテルライフサイクル(①挿入時、②挿入中、③抜去後、④再挿入時)」概念モデルを用いて、包括的なCAUTI予防プログラム(日本版) の開発と改善戦略を策定することを目的とした。 初年度(2019年度)は、①文献レビュー、②国際学会参加、③ミシガン大学視察を実施した。Saint教授の直接指導のもと、病院での実地研修、リサーチミーティングへ参加で包括的なCAUTI予防について多くの知見とアドバイスを得た。 2年目(2020年度)は、CAUTIの発生とケアバンドルの実施状況を明らかにするため、単施設の2病棟の606症例を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。しかしながらCOVID-19 の影響により、Saint教授来日予定時のエキスパートパネルの中止、研究代表者の米国への渡航困難な状況が続き、2年間の科研費補助事業延長承認(2022年度まで)を得た。3年目は研究成果の発表、4年目は、ミシガン大学とのWeb上のやり取りを通じて、実際の教育ツールの日本語への翻訳、並びに臨床現場への導入の可能性について日本の感染管理実践者らと検討した。一方で、ミシガン大学関係者とのエキスパートパネル やデルファイ法によるプログラムの妥当性評価には至らず今後の課題となった。主な学術的成果は2件で、後ろ向きコホート研究結果について、日本環境感染学会誌に原著論文として、第10回日本感染管理ネットワーク学会学術集会(2022年5月21日奈良県)の一般演題として発表した。
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