研究課題/領域番号 |
19K19606
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
福田 正道 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (00781139)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 骨転移の骨折予防行動 / 身体知覚反応 / 状況認識、姿勢、特性 / 自己存在の無意味性 |
研究実績の概要 |
骨転移を有するがん患者の骨折予防行動に影響している諸要素の抽出を行った。データが飽和するまで研究症例数を追加し蓄積データの分析を行い抽出された諸要素のカテゴリー化を行った。諸要素間の関係性を構造化し、行動を規定している3つの経路が明らかとなった。①身体反応を主導とした自他ともに認識の難しい身体知覚反応レベルの経路、②行動に向かう姿勢、状況認識、本人の特性、戦略により相互作用的に規定されていく経路、③絶え間ない欲動や自己存在の無意味性に浸食され続ける情動反応を主導とした経路の3つである。的確な状況認識から行動遵守に至る理想の経路においても骨転移の特性上、ステージⅣということから、常に身体的な命の危機と自己存在の無意味性を突きつけられておりそこに対処することで行動に至っているということが明らかとなった。②と③の経路の違いは、命の危機や自己存在の無意味性に対しての対処が功を奏しているかそうでないかの違いであった。今回のデータ分析を通し骨転移患者の骨折予防行動を規定している要素は単一的な意思決定に基づき行われているわけではなく、①のように身体反応として認識が関与できない中で進んでいく身体と環境の相互反応的経路や、②、③のように瞬間瞬間に訪れる欲動と規範の葛藤の中、自己存続の揺らぎを通し苦し紛れに対処している現象が起こっているということが明らかとなった。今後、具体的な介入方法の検討を進めていく必要があり、そこには看護学領域だけでは限界があり医学、理学療法学、哲学、社会学、保健行動学における文献や書籍の探索を継続し、介入モデルの作成を行っていく必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨転移を有するステージⅣの方を対象としており、治療や病状により日々のコンディションが大きく影響するため、患者の負担がない状況での面接を行う必要があり環境も含めた患者選定に時間を要した。また、同時に蓄積データの分析を行いつつデータが飽和に達していると判断できるまで面接の継続を行ったため予想以上に時間を要してしまった。分析は行うことができたが、予定していた他学問を取り入れた患者中心の新たな介入モデルの作成まで十分に行えなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
骨折予防行動に影響する諸要素の抽出ができ、諸要素間の構造化を行うことにより行動を規定している3つの経路が明らかになった。今後の研究の推進方策としては医療者がどのタイミングでどのような介入を行っていくかを検討していく必要がある。身体知覚経路に関しては、身体と環境との相互反応への介入が中心となるため、医学や理学療法学的視野を取り入れ介入のポイントを見出していく必要がある。また、状況認識、本人の特性、行動に向かう姿勢、戦略に関しては、本人の生活背景やセルフケア能力、コーピング方法、パーソナリティ的要素も含まれていくため看護学的視点を中心に介入ポイントを見出していく必要がある。そして、欲動の制限や自己存在の無意味性に関しての介入は人間の根源的部分への介入であり哲学的、社会学的な視野を通して介入の可能性やその方法を見出していく必要がある。他領域の知見を参照し整理・統合しながら効果的な介入プログラムの作成を行っていく。その後、臨床施設における実用に向けて専門家からの意見を取り入れプレテストを検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
covid-19による学会参加の見合わせにより予定していた旅費の執行ができなかった。また患者選定に時間を要したため研究分析も遅れてしまい研究発表や論文作成ができず、発表や投稿に予定していた費用も執行できなかった。今年度に行えなかった情報収集、学会発表、論文投稿を次年度に予定し、執行していく予定である。また次年度は介入モデルの作成を予定しているため、臨床施設へのプレテストに向けての準備費を充実させていきたいと考えている。
|