本研究は、精神科病棟において他害行為を理由として隔離となった患者への看護として、安楽に向けた看護ケアに着目している。2023年度は、インタビュー調査、分析を行い、他害行為によって隔離となった患者への安楽に向けた看護ケアを解明、定義し、実践事例集を作成していった。 インタビュー調査は、①初回入院の隔離体験を語ってもらうものと、②隔離経験のある精神疾患患者であり長い期間が経過した患者に、隔離の経験を経た後の生活を語ってもらうものである。今年度は、このうち①について、2名の患者にインタビュー調査を行った後、すでに終えているインタビューデータと共に①、②の分析を行った。 ①の研究によって、精神科での隔離では、隔離開始と共に患者は耐え難く誰も信用できない状況に陥ること、どうにかして解除になるためにもがくものの解除にならずあきらめること、回復の過程で他者の援助によって前を向くことができ、自身を内省し、解除に向けて行動をとっていくことが明らかになった。また、②の研究によって、隔離時の体験は、隔離後の長い期間が経過した後の生活に影響を与えていること、その後の人生での体験によって隔離体験の意味づけが変遷していることが明らかになった。 ①、②の研究によって、隔離となった患者の安楽は著しく損なわれる状況であり、患者への隔離中の看護においては、急激な精神症状を呈する状況に寄り添うと共に、隔離に伴う体験を緩和する看護が必要となること、その後の人生の再構築を援助していくことが必要であることが解明された。 これらの研究成果を元に、看護のあり方を示した実践事例集を作成した。
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