本研究は乳幼児精神保健(Infant Mental Health)およびファミリーパートナーシップモデル(Family Partnership Model)の理念に基づいて、発達障害のある子どもをもつ親への育児支援研究である。ペアレント・メンターおよびペアレント・メンター・コーディネーターの養成を行い、ペアレント・メンターと専門職が組織的に協働する体制を試験的に実践し、その実行可能性および効果を検討することを目的とする。 2019年7月に所属施設(東京医科歯科大学)医学部倫理委員会の承認を得たのちに、ペアレント・メンター2名、ペアレント・メンター・コーディネーター1名をリクルートし、2019年9月から研究計画に従い、乳幼児精神保健に基づく養成プログラム(講義・演習)を提供した。 2020年度は、対象者の実践スキルトレーニングとして、延べ30回のペアレント・トレーニングに実際に参加し、地域で発達障害の子どもを育てる母親たちと交流する機会をもった。 2021年度~2023年度は、継続してペアレント・トレーニングに参加し、ペアレント・メンターおよびペアレント・メンター・コーディネーターとしての役割や自己効力感等を評価し、次クールへの目標と課題を明確にしたうえで実践を重ねた。最終年度の2023年7月にすべてのデータ収集を終了した。 メンター活動として専門職との協働でペアレント・トレーニングを実践した効果検証において、メンター養成および養成プログラムは、援助者利得を伴ってメンターの自己効力感維持・向上につながっていることが明らかとなった。また、メンター活動の評価はペアトレを受講した母親の養育行動において統計学的な有意差は認められなかったものの、養育レジリエンスを向上する可能性が示唆された。一方で、メンターの負担となる自己体験の語りへの配慮や日程調整やメンターの数など整備の必要性も示唆された。
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