本研究の目的は心疾患を対象として心肺運動負荷試験(CPX)に耳朶血流(EBF)という新しい指標を取り入れることで,予後や運動療法に関する新しい指標となりうるかどうかを明らかにすることである.さらにEBFを指標としたより効果的かつ簡便な治療法の開発を目指した. EBFとCPX指標や運動機能との関連明らかにすることを目的に,健常者及び心疾患におけるCPX中のCBFを横断的に調査した.その結果,我々の想定通り運動耐容能の低い心疾患患者は運動負荷でEBFが低下することを明らかにした.最高酸素摂取量は心疾患の予後指標であることから,この結果はEBFが心疾患の予後指標となり得ることを示唆する.さらにEBFを指標とした治療法として簡便に実施可能な足浴に着目し,効果的な方法について模索した.健常者を対象とした予備実験を行い,42℃で20分間の下腿浴により,EBFは最大運動強度時と同程度の上昇を示すことを確認できた. 新型コロナウイルス感染拡大により,感染リスクが高いCPXの実施が困難となり,研究計画の一時中止と変更を余儀なくされた.そこで呼気ガス分析の代替法としてのウェアラブルデバイスの利用について検討した.健常者を対象に心拍数と呼吸数をウェアラブルデバイスにて測定し,その正確性と運動強度や嫌気性代謝閾値の関連について調査した.その結果,ウェアラブルデバイスによる漸増運動負荷試験中の心拍数と呼吸数は正確であり,呼気ガス分析によって測定された運動強度と高い相関を示した.さらに呼吸数から嫌気性代謝閾値を推定できる可能性があることを明らかにした. 呼気ガス分析の代替としてウェアラブルデバイスを用いることでwith/postコロナにおいても引き続き本研究の遂行が可能になると考える.
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