研究課題
二重課題を行った際に生じる課題成績の低下 (二重課題干渉) は、転倒や交通事故の一因と考えられている。この二重課題干渉を抑制する新たな方法として、我々はこれまで認知課題に着目して研究を続けてきた。今回の研究の目的は、認知課題によってなぜ二重課題干渉が抑制されるのか、その機序の一端を明らかにすることであった。具体的には、認知課題を実施している最中の脳活動を近赤外線分光法装置にて測定し、認知課題によって生じる脳活動の変化と二重課題干渉の抑制量との関係を検討した。最終年度の研究成果として、認知課題によって生じる背外側前頭前野の活動の亢進量と二重課題干渉の抑制量との間に相関関係を見出すことができた (国内学会発表済、国際学術誌掲載済)。また、背外側前頭前野の活動が高まらない認知課題は、二重課題干渉を抑制しなかった。この結果は、数ある認知課題の中でも背外側前頭前野の活動が高まる認知課題が、二重課題干渉の抑制効果を持つことを示唆する成果であり、二重課題干渉の抑制効果に優れた認知課題を探索する発展的研究を展開する上で足がかりとなる成果ととらえている。今後は、上記のように二重課題干渉の抑制効果に優れた認知課題の探索、二重課題干渉の抑制効果を高める認知課題の実施時間や頻度の追求、認知課題による二重課題干渉の抑制効果が生じやすい二重課題の探索、研究成果の臨床還元を念頭においた研究を展開していく予定である。
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Behavioural Brain Research
巻: 396 ページ: 112881~112881
10.1016/j.bbr.2020.112881