地域在住高齢者を対象として,認知課題(引き算・想起)に回答しながら歩行したときの,つま先の軌跡と前頭葉の脳活動を反映する前頭部の血流変化を計測した.大学生と比較して高齢者では,①3分間歩行距離に差はなかった,②つま先を持ち上げて足を前に出す(nMTC)の頻度が高かった,③前頭部の血流変化が高かった.以上の結果から,地域で自立して生活している高齢者であっても,複数の課題を同時に処理するために,転倒しないように注意しながら歩いていることが推測された.nMTCの頻度が増えることは,複数の課題を同時に処理する能力が低下し,転倒の危険性が高まっていることを表すサインとなる可能性がある.
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