研究成果の概要 |
本研究では不安の情動伝染と運動パフォーマンスの関係に着目し, 他者の不安表情が運動パフォーマンスに及ぼす影響を調べた. ボールの的当てを課題とし, 13名にボールを投げる直前に他者の不安表情を見る不安条件, 中性表情を見る中性条件を行わせた. 実験の結果, 中性条件よりも不安条件において不安感情が有意に高い傾向, また運動パフォーマンスは低い有意傾向が認められた. 一方で, 不安が低い実験参加者の前頭筋の方が不安が高い実験参加者の前頭筋よりも有意に活性化していた. 以上より, 不安の情動伝染により運動パフォーマンスが低下する可能性が示唆されたものの, 主観的指標と生理指標の不一致も確認された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
心理的プレッシャーによる運動パフォーマンス低下(“あがり”)に悩むスポーツ選手は多く, プレッシャーにより不安感情が生じること等がこれまでに明らかになっている. しかし集団種目における“あがり”に着目した研究は少なく, プレッシャー下で何が起きているかは十分に明らかでない. 集団種目ではチームメイト等他者の存在もパフォーマンスに大きく影響する点に本研究は着目して, 情動伝染(他者の感情が伝染する現象)と運動パフォーマンスの関係を取り上げた. 本研究によって得られる知見は集団種目における “あがり” のメカニズム解明や “あがり” 研究全体の進展に意義のある結果を提供できると考えられる.
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