本研究では,東日本大震災後の復興事業に伴う護岸工事等で陸域と海域が分断されつつある現在,東北地方太平洋沿岸域を含めた日本列島の半陸生ガニ3種(クロベンケイガニ,アカテガニ,アシハラガニ)を対象に遺伝的な分集団化や局所集団の孤立の可能性を明らかにすることを目的した.その結果,半陸生ガニ3種の中でクロベンケイガニのみが,東北地方から房総半島にかけての太平洋沿岸地域集団と他地域集団とで遺伝子交流の制限が示唆された.このことから東北地方太平洋沿岸域の個体群維持のためには,クロベンケイガニの生息場である陸域と海域の連続性確保が必要である.
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