研究課題/領域番号 |
19K20603
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
横山 優一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 博士研究員 (20824163)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 位相回復アルゴリズム開発 / スパースモデリング / シングルショットイメージング |
研究実績の概要 |
代表的な磁気テクスチャーの一つである磁区を対象としたスパース位相回復アルゴリズムを開発した。磁区の画像は一見するとスパース(まばら)では無いが、隣接ピクセルとの差分をとった画像(微分した画像)はドメインの境界以外ほとんど値を持たないため、スパースと考えられる。そこで、このような磁区のスパース性をTV正則化として位相回復アルゴリズムに組み込み、TV正則化に基づくスパース位相回復アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムの有効性を確認するため、複数の磁区パターンを時間依存Ginzburg-Landau(TDGL)方程式を用いた計算によって生成し、X線自由電子レーザーのシングルショット計測を想定した位相回復シミュレーションを行った。従来型の位相回復アルゴリズムではシングルショット計測を想定したノイズや欠損を含む回折像から実空間像を再構成することは困難だったが、TV正則化に基づくスパース位相回復アルゴリズムでは実空間像の再構成を可能とし、磁区パターンの情報を抽出することに成功した。本アルゴリズムは磁区のシングルショット計測に有効であり、これまでに開発したL1正則化に基づくスパース位相回復アルゴリズムと使い分けることで、本申請課題のテーマである磁気テクスチャーの時空間分割計測が実現可能になると期待される。TV正則化に基づくスパース位相回復アルゴリズムについて、日本物理学会第76回年次大会で口頭発表し、論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析アルゴリズム開発については順調に進行している。磁区のシングルショット計測に対応可能なスパース位相回復アルゴリズムを新たに開発し、その有効性をシミュレーションで確認した。本アルゴリズムについて、日本物理学会で口頭発表も行った。 一方、実験については、新型コロナウイルスの影響で2020年度は行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験の実施については次年度も未定であるため、シミュレーションを通じて解析アルゴリズムの更なる改良を行いたい。加えて、既に計測された実験データへスパース位相回復アルゴリズムを適用し、開発したアルゴリズムが実際の計測データに対しても有効に機能することを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの影響で計画していた実験を実施できなかったことと出張が中止になったことにより、次年度使用額が生じた。次年度も実験実施については未定であるため、解析アルゴリズム開発やシミュレーションなどに重点を置いて研究を進めたい。次年度使用額は計算機環境の強化に使用したい。
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