研究課題/領域番号 |
19K20638
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
菊池 信彦 関西大学, 東西学術研究所, 特別任命准教授 (00826373)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テキストマイニング / デジタルヒストリー / 第二共和政 / 読書史 |
研究実績の概要 |
本研究は、本の日とサン・ジョルディの日という2つの祭の「接続」を通じて、カタルーニャとカスティーリャのそれぞれの国家/地域文化ナショナリズムを「接続的な」観点から検討し、既存の対立図式とは異なる新しい解釈を生み出すことを目指している。 当該年度は、特にスペイン第二共和政期(1931-1936年)に焦点を当て、次の3点の検討を行った。A)第二共和政期に発行された新聞各紙において、「本の日」/「サン・ジョルディの日」の記事の書き方がどのように変化していったのか。あるいは変化がなかったのか。B)書店等が発行した広告を史料に、祭りでどのような本が積極的に売られ、バラや本の露店の位置関係はどのようなものだったのか。また、その変化の有無。C)「本の日」/「サン・ジョルディの日」を実行した図書商業組合の史料をもとに、運営側に「接続」に関するどのような意図があったのか。 結果、A)に関し、当時の新聞記事約1500点をテキストマイニングの手法で分析することで、2つの祭は時間を経るごとに「接続」へと近づいたものの、第二共和政期は別々の祭として扱われていたことを示すことができた。また、C)の分析からは、2つの祭では、国家/地域文化ナショナリズムの対立的な視点そのものも見出すことができなかった。これらのことから、2つの祭の「接続」を検討するうえで、第二共和政期以降、内戦からフランコ独裁期を経て、民主化までの分析が重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、第二共和政期の新聞史料データの収集と分析は完了した。また、図書商業組合史料の収集と分析も行い、概ね予定していた目標は達成された。しかし、予定していた調査のうち、当時の販売図書に関する調査は未着手である。 一方で、次年度以降に予定していた第二共和政期以降の分析に必要な史料収集が進行しており、結果、概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、第二共和政期の祭で販売されていた本とその売店の位置関係について、史料分析からマッピングを行う。 次に、内戦期以降を対象に、新聞史料のテキストマイニングによる分析、そして、図書商業組合やカタルーニャ州政府等の史料内容の分析とともに、デジタルヒストリーの観点から、祭の空間的分析を行い、2つの祭の「接続」の解明を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題と重なるテーマで所属大学へ申請した単年度の研究助成金が獲得できたため、当該年度は、その助成金を優先的に使用することとした。この結果、当該年度において次年度使用額が生じた。 また、当初の予定では、次年度の現地資料調査は1回のみを計上していたが、当該年度の調査の結果、資料調査回数を増やす必要があることが判明した。そのため、次年度使用額は、現地資料調査の回数増分に充てる想定である。
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