研究課題
若手研究
本研究は、他者の存在が自己の身体感覚に与える影響について検討した。特に、身体内部の生理状態に対する感覚である内受容感覚に着目して研究を実施した。研究1では、他者からの直視によって自己の心拍知覚の精度が向上することを示した。研究2では、他者との視覚体験の共有によって自己身体の生理的覚醒度の知覚の精度が向上することを示した。これらの結果から、人間の脳は、社会相互作用が生起しうる状況や文脈において自己の身体状態をより正確に知覚する仕組みをもつことが明らかになった。
生理心理学
身体内部の生理状態に対する感覚である内受容感覚は、感情や身体的自己の成立に欠かせない感覚システムであり、認知神経科学などの分野において近年非常に注目を浴びている。自己の身体内部の感覚である内受容感覚が他者の存在によって促進されるという本知見は、内受容感覚の機能の理解を深めるだけでなく、人間の複雑な社会性を支える生理的メカニズムについても重要な示唆を与えるものである。将来的には、人間同士や人間とロボット間の円滑なインタラクションをサポートするシステムの開発にも貢献可能な知見であると考える。