粒子線治療はX線治療に比べて、特定の深さで高い放射線量を放出するブラッグピークという特徴があるため、副作用の低い放射線治療として注目されている。 この特徴を最大限に生かすために粒子線治療前に照射部位に合わせた照射条件を決めておく治療計画が必要があるが、臨床現場ではX線CTから得られる体内の断層データを元に行われている。しかしX線は粒子線と違いコンプトン散乱等の要素があるため、大きな不確かさを伴うという問題がある。そのため、X線の代わりに陽子線で体内をスキャンすることで、粒子線による線量分布を直接測定する陽子線CTが近年国際的にも活発に装置開発が進められている。この特徴を最大限に生かすためには目的の治療部位に対して一様な線量分布でかつそれ以外の部位ではできるだけ吸収線量が小さくなるように、最適化されたビーム照射を行う必要がある。ビーム軸方向には 拡大ブラッグピーク (SOBP) とよばれる深度方向に一様に線量分布を広げたビームを生成する必要があり、その線量分布生成のためのビーム軸上の構造物であるリッジフィルタの開発・テストを昨年度までに行った。 今年度はこのテストデータの解析を中心に行い、特にリッジフィルタにおけるビームの減衰及び散乱を定量的に評価し構造最適化の手法を確立した。 また、分子科学研究所のUVSORのビームを利用してゲル線量計のテストを行い、特に得られる線量分布における線量依存性を評価した。
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