研究課題
若手研究
本研究では、ポリロタキサン表面の分子可動性が上皮細胞の細胞-細胞接着に果たす役割について評価した。分子可動性の高いポリロタキサン表面では、上皮細胞内の転写因子YAPが細胞質に局在化し、分子可動性の低い表面ではこのYAPが核に局在する傾向があった。さらに細胞質内のYAP局在は、タイトジャンクションに関連した遺伝子の発現を増加させた。このようなポリロタキサンを基盤としたバイオマテリアルは、生体内における物理的な免疫システムの改善や生体組織の修復のための強力なツールとして期待できる。
バイオマテリアル科学
歯科においては細菌感染によるタイトジャンクションの損傷が歯肉炎や歯周炎を引き起こし、歯周病の原因となることが知られている。歯周病は歯槽骨の破壊や歯の喪失のみでなく、アルツハイマー病、脳卒中、心臓病、糖尿病などとの関連が指摘されている重大な疾患である。細胞-細胞間接着を促す生体材料は、生体組織の再建を助けるのみでなく、炎症を抑えることで組織を治癒・修復することが期待される。バイオマテリアルを用いた生体組織の再構築と修復の両立は、組織再生において合理的であり大きなメリットをもつ。