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2022 年度 実施状況報告書

左室拡大合併による僧帽弁逸脱の偽正常化現象

研究課題

研究課題/領域番号 19K20721
研究機関産業医科大学

研究代表者

岩瀧 麻衣  産業医科大学, 医学部, 講師 (40771308)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード僧帽弁逸脱症 / 経食道心エコー図検査
研究実績の概要

これまで、僧帽弁逸脱症(MVP)の評価は一般に弁輪を基準とした逸脱弁尖全体の逸脱(上方変位)を基準として判断してきた。しかし、臨床的にMVPと僧帽弁閉鎖不全症(MR)重症度が解離する症例を認めるが、これまで詳細な検討はない。本研究は「左室拡大合併による逸脱弁尖テザリングが弁輪基準の弁尖逸脱とMRの解離の基本機序である」ことを明らかにし、さらに「非逸脱弁尖に対する逸脱弁尖先端の逸脱評価が解離の少ない適切な評価方法である」ことを明らかにすることを目的とした。我々は、経食道心エコー図検査を施行した連続MVP症例のうち、重症MR例に対し解析を行った。重症MRにおいて、弁輪を基準としたMVP容量弁輪は、左室拡大により減少(=偽正常化)した。非逸脱弁尖を基準としたMVP容量と非逸脱弁尖を基準とした逸脱弁尖先端の逸脱(弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖)は、左室が拡大しても減少(偽正常化)することはなかった。これは、MVPが重症になる程左室が拡大することを示し、この指標が疾患重症度を良く反映していることを示唆する。また、弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖はMR逆流重症度(VCA面積)と極めて良い相関を認めた(R=0.72, p<0.0001)。左室拡大の少ない重症MVPは、逸脱弁尖がMVP容量弁輪・MVP容量非逸脱弁尖・弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖ともに重症である。これに対し高度左室拡大を伴った重症MVP例(重症MRを伴う)では、MVP容量弁輪はほぼゼロであり、MVP容量非逸脱弁尖は軽~中等度に留まる。しかしながら、弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖は重症であり、MR重症度に合致した。
本研究により、MVPに伴う重症MRの決定因子が解明され、より良い病態の理解が得られるようになり、外科的弁形成術のターゲット解明を通し治療への貢献になると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は、経食道心エコー図検査を施行した連続MVP症例のうち、重症例83例に対し解析を行った。重症MRにおいて、弁輪を基準としたMVP容量弁輪は、左室拡大により減少する傾向を認めた。非逸脱弁尖を基準としたMVP容量非逸脱弁尖および非逸脱弁尖を基準とした逸脱弁尖先端の逸脱(弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖)は左室が拡大しても減少することはなく、むしろ増大傾向を認めた。これは、MVPが重症になる程左室が拡大することを示し、この指標が疾患重症度を良く反映していることを示唆する。また、弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖はMR逆流重症度(VCA面積)と良い相関を認めた。左室拡大の少ない重症MVPにおいては、逸脱弁尖がMVP容量弁輪・MVP容量非逸脱弁尖・弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖ともに重症である。これに対し高度左室拡大を伴った重症MVP例は、MVP容量弁輪はほぼゼロであり、MVP容量非逸脱弁尖は軽~中等度に留まった。しかしながら弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖は重症であり、MR重症度に合致した。
この様に、仮説通りの結果が得られている。狙い通りの研究が遂行可能である。

今後の研究の推進方策

我々は、症例数を揃え、解析を施行したところ、弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖はMR逆流重症度(VCA面積)と極めて良い相関を認めた。左室拡大の少ない重症MVPにおいては、逸脱弁尖がMVP容量弁輪・MVP容量非逸脱弁尖・弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖ともに重症である。これに対し高度左室拡大を伴った重症MVP例は、MVP容量弁輪はほぼゼロであり、MVP容量非逸脱弁尖は軽~中等度に留まった。しかしながら弁尖先端MVP面積非逸脱弁尖は重症であり、MR重症度に合致すると考えられた。
この様に、仮説を支持する結果が得られているため、データをまとめ論文化を進行中である。

次年度使用額が生じた理由

感染症の流行があり、経食道心エコー図検査を延期した症例があること、参加予定の学会が延期となったことから、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、学会参加費と論文校正、論文掲載費用に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Survey results: status report on problems caused by sexual mismatch between sonographer and patient during echocardiography?a 2020 report of the Japanese Society of Echocardiography2022

    • 著者名/発表者名
      Iwataki Mai、Murata Mitsushige、Fujita Masashi、Toide Hiroyuki、Akasaka Kazumi、Iino Takako、Goda Akiko、Takei Kohta、Toh Norihisa、Miyasaka Yoko、Yamano Michiyo、Ishizu Tomoko、Nakatani Satoshi、Yamamoto Kazuhiro
    • 雑誌名

      Journal of Echocardiography

      巻: 21 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1007/s12574-022-00591-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Large discrepancy in optimal atrioventricular delay between sensed and paced atrial events in a pacemaker patient2022

    • 著者名/発表者名
      Yamagishi Yasunobu、Oginosawa Yasushi、Miki Hajime、Yagyu Keishiro、Miyamoto Taro、Tsukahara Keita、Iwataki Mai、Ohe Hisaharu、Kohno Ritsuko、Kataoka Masaharu
    • 雑誌名

      Pacing and Clinical Electrophysiology

      巻: 45 ページ: 435~438

    • DOI

      10.1111/pace.14412

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 肺高血圧の心エコー診断に挑む2022

    • 著者名/発表者名
      岩瀧麻衣
    • 学会等名
      第32回日本超音波医学会九州地方会学術集会
  • [学会発表] TAVIを見据えたAS診断:Paradoxical low flow low gradient ASの診断2022

    • 著者名/発表者名
      岩瀧麻衣, 尾上 武志, 伊藤英明, 磯谷彰宏, 梅田ひろみ, 藤野善久, 羽生道弥, 安藤献児, 白井伸一, 佐伯覚, 鍋嶋 洋裕, 赤司 純, 尾辻 豊, 片岡 雅晴
    • 学会等名
      第95回日本超音波医学会学術集会, 名古屋, 2022
  • [学会発表] 心エコー、男性技師が抱えるハードルについて考える 「心エコー図検査時の検査技師と患者間の性別不一致の問題に関するアンケート結果を踏まえて」2022

    • 著者名/発表者名
      岩瀧麻衣, 村田光繁, 藤田雅史, 戸出浩之, 赤坂和美, 飯野貴子, 合田亜希子, 武井黄太, 杜徳尚, 宮坂陽子, 山野倫代, 石津智子, 中谷敏, 山本一博
    • 学会等名
      第33回日本心エコー図学会学術集会
  • [図書] 徹底解説 心臓腫瘍 僧帽弁輪石灰化とその関連腫瘍2022

    • 著者名/発表者名
      岩瀧麻衣
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      文光堂
  • [図書] 新 今さら聞けない心エコー図2022

    • 著者名/発表者名
      岩瀧麻衣
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      医学書出版社・メジカルビュー社

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公開日: 2023-12-25  

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