研究課題/領域番号 |
18H05791
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 盛岡大学 |
研究代表者 |
福嶋 祐貴 盛岡大学, 文学部, 助教 (10826100)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 協調学習 / 教育評価 / 認知的徒弟制 / グループ認知 |
研究実績の概要 |
本研究は、次の2点を課題としている。①文献調査と海外研究者へのインタビュー調査によって、協働的な学習を評価するという営みの原理・構造と、満たすべき規準(妥当性、信頼性、公平性)のあり方を解明すること。②文献調査で得た知見を、実践において検証することで、効果的に協働的な学習を評価するための評価基準・方法の方向性を指し示すこと。2018年度は①のうち特に文献調査に取り組んだ。これにより、集団の持つ知を前進させることを視野に入れた協調学習について、その知をどう捉え、評価していくかという方途について示唆が得られた。具体的には、第一に、コンピューターを媒介としたCSCL(Computer-Supported Collaborative Learning)研究のうち、「グループ認知(Group Cognition)」論を検討することを通じて、集団を主体として捉える教育目標-評価モデルが直ちに個性軽視や黎明期社会心理学でいうところの「集団錯誤」につながるわけではないことを確認した。共同体における知識構築に関心が集まっている現在、集団を学習主体あるいは分析単位として、すなわち評価の単位として捉えることが有効になってきている。第二に、1980年代後半に開発された認知的徒弟制(Cognitive Apprenticeship)モデルの検討を行い、集団(あるいは共同体)の文化を創造していく学習過程における協調学習の位置づけと特徴を確認した。それは、協働で問題解決を行う中で、熟達者の実践に対する見方・考え方をともに作り上げていくという点、学習における協働が熟達化の実践に埋め込まれた形で要求されるという点、学習者たちが異なる役割や観点に立ち、お互いの用いる方略を明確化・検討しあうという点を特徴としていた。以上の成果は論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に予定していた現地調査については、調整が滞ったため未だ実施できていない。しかしながら、資料提供を受けるなどによってある程度の成果は得られている。今後さらに調整を進め、まとまった渡航計画を確保できる時期に現地調査を行う必要がある。またこれにより、2019年度に予定していた文献調査を一部前倒しして実施することができた。特に未入手の文献の収集および調査については、資料提供などもあり、ほぼ計画以上の進捗を示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、文献調査も引き続き行いつつ、①のうち特に現地調査、および②の実践に取り組む予定である。調査対象としては、昨年度の作業から対象を再吟味したうえで、候補を絞っている。②として、教育実践においてデザイン・リサーチを行い、既に試案として構築しているモデルを、①の理論的検討や実践における知見にて改善・検証することを進めていく。これにより、協働的な学習に対する効果的な評価を実現するための評価基準と評価方法の方向性を明らかにする。
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