教養概念をめぐって、当時の知識人の間で重層的に展開された19世紀イギリスの自由教育論争で、科学教育を推進する立場にあったT. H. ハクスリーと、その主たる論争相手で文学教育を擁護する立場にあったM. アーノルドの自由教育論争における位置づけを「自由教育の理想的な教育内容は何か」、「自由教育は誰のための教育か」という2つの問いから検討した。検討の結果、J. H. ニューマンやJ. S. ミルなどの他の代表的な論者が「エリート教育としての新たな自由教育」を模索していたのに対して、ハクスリーとアーノルドは「エリート教育ではない新たな自由教育」を模索していたことを明らかにした。
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