共培養は、自然界のように複数の微生物を混合して培養する方法であり、微生物を共培養することにより単独培養では産生されない化合物の取得が可能であることが知られている。これまでに、細菌や放線菌を用いて真菌に対する共培養を行った例は多く報告されており、多くの新規化合物が産生誘導されることが明らかにされてきた。しかし、真菌どうしの共培養エキスから生物活性物質を探索した例は少ない。本研究では、共培養研究を展開し新規骨格あるいは特異な生物活性を有する化合物の探索を目的とし、医薬シーズを探索する戦略として、共培養の有効性と汎用性を調べている。 宮崎県日向市の土壌から単離した12種の真菌について、寒天培地上で総当たりの組合せ(66種)で共培養して経過を観察したところ、いくつかの組み合わせで、接触領域に変色が認められた。その中で、接触領域が赤く変色した17F4103株と17F4110株の組み合わせについて、変色領域を抽出しLC-MSで分析した。その結果、単独で培養した場合には確認されなかった、m/z 376 [M+H]+、371 [M-H]-、346 [M+H]+ の3つの化合物の存在が確認できた。そこで今回は、これらの化合物を単離することを目的として大量培養を行い、培養物のMeOH抽出物を精製し、化合物1と2を得た。1は、各種NMRスペクトルとMSスペクトルからピリジンアルカロイドのPenicidone Dであることがわかった。また、当初、目的としていたm/z 371 [M-H]- の化合物は、既知のvermixocin A (2)と同定した。本研究により自然界では普遍的に存在する微生物間の相互作用を利用することにより、天然物に本来備わる構造多様性の一端を明らかできたと考えている。
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