冠状血管内皮細胞の起源については、静脈洞内皮細胞・心外膜原基・心室心内膜等が報告されている。本研究の目的は静脈洞内皮細胞がどのようにふるまうことで冠状血管内皮細胞に編入していくのかを明らかにすることである。その方法として、ウズラニワトリキメラ、蛍光色素標識、ウズラ内皮細胞を特異的に認識するマーカー(QH1)等を用いて検討をおこなった。その結果、心室自由壁の冠状血管内皮細胞は静脈洞内皮細胞に由来することが示された。一方で心室中隔の冠状血管内皮細胞に対しては静脈洞内皮細胞の寄与は少なく、他の起源細胞に由来することが明らかとなり、その正体は心室心内膜であることが示唆される。静脈洞内皮細胞が冠状血管内皮細胞として編入する詳細な時期については、心外膜原基が心室背側面に接着して原始心外膜を形成する段階で既にQH1陽性の細胞が心室壁に認められた。静脈洞内皮細胞から編入するQH1陽性細胞を詳細に観察したところ、一部の研究で示唆されているようなangiogenesis(血管新生)の様式による血管形成は確認できなかった。このことから静脈洞内皮細胞は心室背側面にバラバラの状態で『種を撒く』ように配置されたのちにvasculogenesis(脈管形成)の様式で冠状血管を形成していく可能性が示唆される。よって、今後は血管の形成パターンについても着目しながら冠状血管発生について明らかにしていきたいと考えている。
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