本研究は、北海道東部太平洋側において、海霧の酸性成分の由来をイオウの安定同位体比分析によって解明することを目的とした。 3地域で採取した地衣類で測定した結果、内陸ではいずれの地域でも5 ‰前後で平衡に至ったことから、沈着するイオウの起源は内陸では天水と考えられた。一方、海岸線では7~13 ‰であり、またいずれの採取地周辺でも大規模な人為負荷源が存在しないことから、海由来の寄与が相対的に高いと考えられた。また、海岸線におけるイオウ安定同位体比には地域差が大きく、海霧の年間発生日数とは異なる傾向を示したことから、海霧の発生頻度に加えて、沈着を支配する卓越風の風向などの微気象によると考えられた。
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