研究課題/領域番号 |
19K21682
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
矢内 勇生 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 講師 (50580693)
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研究分担者 |
SONG JAEHYUN 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (70822617)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 選挙 / 日本政治 / 計量分析 / データ分析 / メタ分析 / データベース / 知の蓄積 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでに実施された日本の選挙研究の知見を、統計的メタ分析を応用することによって統合し、知識を蓄積・共有するための新たな方法を提案することを主な目的とする。また、研究者がメタ分析を行うための資源を提供するとともに、政治学がこれまで蓄積してきた選挙研究の分析結果を閲覧するためのデータベースを提供することを目指す。 初年度である2019年度は、先行研究の収集作業を進めた。戦後の日本の選挙に関する定量的分析を行った研究のうち、日本語または英語で書かれて公刊されたものすべてが収集の対象である。このうち、日本語の雑誌論文に関してはおおむね集め、書誌情報を整理することができた。 また、収集した先行研究をデータベースに登録するための準備を始めた。本研究では、単に書誌情報を集めるだけでなく、研究の概要をデータベースに収録し、どのような研究成果が蓄積されているかが簡単に調べられるようにすることを目指す。また、メタ分析を実行するためには、各研究のリサーチクエスチョンと利用されている分析手法を明らかにする必要がある。したがって、先行研究を研究対象、分析手法、変数の測定法や利用するデータの種類などによって分類しなければならない。そこで、そのための分類基準を策定する作業を進めた。 最後に、『選挙研究』ならびに『年報政治学』という日本の政治学における代表的な学術誌に最近10年の間に掲載された選挙に関する定量的研究を網羅的に調べた。その結果、日本の選挙に関する定量的研究において、先行研究の知見が十分に考慮されていないという研究コミュニティとしての問題点が浮き彫りになった。この成果は2020年度中に日本の学術誌に投稿する予定であるが、そこで指摘する問題は、本研究が構築するデータベースが公開されればある程度解消されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献の収集作業がやや遅れている。予定どおにリサーチアシスタントを雇用できなかったことがその原因である。文献の収集・分類のためにある程度政治学の知識が求められるので、定量的な研究を行っている政治学専攻の大学院生を複数名雇用することを試みた。しかし、該当者の数が研究開始前に想定していた以上に少ないようで、なかなか適任者を見つけることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、文献の収集作業を進める。日本語論文については初年度のうちに概ね揃ったので、英語論文と日本語・英語の書籍の収集を進める。書籍については大学図書館や国会図書館で収集する予定だが、COVID-19の影響もあるので、計画の見直しも含めて収集方法について検討する。 次に、収集した文献の分類作業を進める。基本的な分類基準として、(1) 研究の結果変数、(2) データの種類、(3) 統計モデルの3つを用いる。 第3に、収集・分類した結果を保存・公開するためのデータベースを構築する。特定の結果(例えば、投票率)を選択すると、それを説明する研究が表示され、その研究の分析結果(例えば、「晴れの日に比べ、雨の日の投票率は2%低い」など)が表示される仕組みを作る。同様に、特定の説明要因を選択すると、その要因を使って選挙を説明する研究が一覧表示され、各研究における当該変数の扱い(例えば、その変数が研究における主な説明変数なのか、研究の主たる関心ではない交絡変数なのか)が確認できる仕組みを作る。ベータ版をできるだけ早期に公開することで、データベースに漏れがある場合に指摘してもらえる体制を整える。 最後に、収集した研究を用いたメタ分析を実施するための準備を進める。最も基本的なメタ分析は、同じ条件の下で行われた複数の実験結果を統合するものである。本研究が分析対象とする選挙研究は、同じ条件で分析を行ったものばかりではない。研究者によって同じ概念を測定する具体的な方法が違ったり、同じ現象を説明するために統制する要因が異なったりする。したがって、既存のメタ分析法をそのまま適用することはできない。そこで、異なる統計モデルを統一的に解釈するためのメタ回帰と呼ばれる手法を基に、ベイズ統計学で発展したモデル選択の知見を加え、新たなメタ分析法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1に、リサーチアシスタントが予定どおりに雇用できなかったために次年度使用額が生じた。この分については、2020年度に予定よりも多くリサーチアシスタントを雇用し、使用する。 第2に、研究分担者のSongがデータベース公開のためのサーバを購入する予定であったが、購入を延期したために次年度使用額が生じた。購入を延期した理由は2つある。第一に、2019年中に公開できるほどデータベースの作成が進まなかったので、サーバを急いで購入する必要がなかった。第2に、年度途中で2020年4月から所属先が変更することがわかっていたので、異動後にサーバを購入する方が適当だと判断したためである。この分については、2020年度にサーバを購入する費用にあてる。
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